高い需要とより持続可能な調達量を見込める魚の開発を目指す複数のスタートアップが、世界各地で水揚げされるマグロに注目している。
そうした企業の1社である米グッドキャッチ(Good Catch)は先ごろ、2年をかけて開発した植物由来のマグロを材料に使った新商品を発売。自然食品やオーガニック食品の定額制販売を行うスライブマーケット(Thrive Market)と、ホールフーズ・マーケットで販売を開始した。
世界で最も人気があり、最も乱獲されている魚種の一つであるということが、グッドキャッチが最初の商品にマグロを選んだ理由の一つだ。
同社の商品の他には、原料にコンニャク芋を使った常温保存が可能なソフィーズ・キッチン(Sophie’s Kitchen)の「Vegan Toona」、トマトを原料としたオーシャン・ハガー・フーズ(Ocean Hugger Foods)の「Ahimi」などが販売されている。
グッドキャッチの創業に関わったビーガン料理のシェフ、チャド・サーノによれば、設立から最初の一年間は主に、植物性のタンパク質やその他の成分を使ってマグロの食感を再現することに費やしたという。
まずは弾力のある鶏肉や牛肉とは歯ごたえが大きく異なる点に注目し、その再現に成功した後、味や栄養面を研究した。
同社の植物由来のツナには3種類のフレーバーがある。原料にはエンドウ豆、大豆、その他のマメ類、藻類オイルが使われており、植物由来のオメガ-3脂肪酸なども含んでいる。そのほか、同商品を原料としたクラブケーキなどの冷凍食品も開発した。
新興ブランドである同社にとって、生産規模の拡大は難しい問題だった。だが、生産を委託できる何社かと契約を結んだほか、今年8月の稼働開始を目指し、オハイオ州に面積約3900平方メートルの工場を建設中だ。
シェフが商品開発を主導した同社は、レストランや企業向けのケータリング会社、その他の食品サービスが取引先の半分ほどを占めることになるとみられている。サーノによると、同社の製品を原料として使用することに関心を示している食品メーカーからも、問い合わせを受けている。
海洋環境の保護を重視
グッドキャッチの中核となる考えは、植物性の食品は全ての消費者にとって、より健康的かつ倫理的な選択肢であるということだ。そして、ますます悪化する海洋環境が、その同社の原動力ともなっている。
国連食糧農業機関(FAO)によると、世界全体の魚の消費量は1961年以降、人口の2倍のペースで増加している。だが、旺盛な需要が続く一方で、供給量は急速に減少している。
さらに、天然の魚介類の体内に蓄積される高濃度の水銀やポリ塩化ビフェニル(PCB)、その他の汚染物質の問題も指摘されている。FAOのデータによれば、養殖魚にも、動き回れるスペースが制限されることや、抗生物質の過剰投与などに伴う危険性といった問題がある。