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2019.03.02

誕生10周年を迎えた「ワッツアップ」が歩んだ激動の歴史

AlexandraPopova / Shutterstock.com

ワッツアップは2月25日、10周年を迎えたことを宣言した。同社のソーシャルチームがツイッターで、アナウンスを行った。

ワッツアップのツイッターの公式アカウントの投稿は、2016年8月24日を最後に途絶えていたが、今回のアナウンスは「We’re back」という文言で始まっていた。

ここ10年間でワッツアップに訪れた最大の変化といえば、フェイスブックに買収されたことだろう。フェイスブックは2014年に220億ドル(約2兆4000億円)を投じ、ワッツアップを傘下に収めた。

その当時、専門家たちはこのアプリにそれほどの価値があるのかと疑問を抱いたが、ワッツアップは現在、世界で15億人以上に利用されている。

買収はワッツアップの利用者に良い結果をもたらした。買収された当時、ワッツアップの2年目以降の利用には年額1ドルが必要だったが、2016年に完全無料化された。

ワッツアップの強みはアンドロイドとiOSをまたいで、スムーズなコミュニケーションが可能な点だ。アップルのiMessageはアンドロイド端末では利用できない。また、グーグルのメッセージアプリもユーザーから支持を得られていない。

しかし、各国の通信キャリアから見るとワッツアップは非常に腹立たしい存在だ。かつて、SMSや通話から莫大な収入を得ていた通信キャリアらは、その収入源を失ったのだ。

ワッツアップの世界的普及によって、通信キャリアは「土管化」に直面することとなった。データをやり取りするパイプでしかなくなったキャリアのインフラは、貴重なマネタイズ手段を喪失してしまった。3G通信の初期に、ビデオ通話をした経験がある人は、キャリアがいかに法外な料金をとっていたかを覚えているはずだ。

通信キャリアのビジネスを根底から覆したワッツアップは、コア機能に一切の妥協を加えないまま10周年を迎えることができた。しかし、親会社のフェイスブックは、ワッツアップの収益化に苦戦している。ワッツアップの創業者らは広告嫌いで知られ、フェイスブックに買収されて以降も、広告の掲載を拒んできた。

ただし、広告だけがワッツアップのマネタイズ手段ではない。同社は2018年1月に企業向け機能のWhatsApp Businessをリリースしており、企業アカウントがユーザーと直接コミュニケーションをとる機能を実装した。

一方、ワッツアップの利用者は、メッセージが暗号化されている点を評価しているが、これは当局が問題視する点でもある。暗号化はプライバシー保護の観点では役立つものの、犯罪者にとってのメリットも大きい。

フェイスブック傘下のインスタグラムやメッセンジャーは、現状ではメッセージの暗号化を行っていない。しかし、フェイスブックは今後、これらのアプリのバックエンドを統合し、暗号化に対応する意向を示している。

ワッツアップ共同創業者のブライアン・アクトンは、フェイスブック幹部と意見が対立した結果、2017年11月に会社を去っていた。さらに、もう一人の共同創業者のジャン・コウムも2018年5月にフェイスブックを離れた。

しかし、その後もワッツアップは利用者の支持を失っていない。無料の音声通話やビデオ通話が可能なアプリは他にもあるが、操作のシンプルさでワッツアップは世界中のモバイルユーザーに支持されている。強固なセキュリティを誇るワッツアップは今後も人々に支持されていくはずだ。

編集=上田裕資

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