日本でも設立が相次ぐCVCにおいて、新たな動きが生まれている。
独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは2018年12月、オープンイノベーション推進に積極的な大企業を集めたラボ「α TRACKERS(アルファトラッカーズ)」を設立した。大企業がスタートアップ企業に投資をするCVCの中でも、日本を代表するCVC運営企業をコミュニティ化し、支援する。参画企業16社からはじめ、追加加入を受け入れ、最終的には30社程度を目指していく。
「α TRACKERS」を創設する背景について、グローバル・ブレイン百合本安彦社長は次のように話す。
「成果が出るまで長い、成果が見えにくいCVCは、景気の変動とともに定期的に浮き沈みを繰り返してきた。米国でもCVCが根付くまでに、何度も減少トレンドを乗り越えてきた歴史がある。日本のスタートアップ市場は12年以降、右肩上がりの成長を続け、国内CVCも100社以上存在するなど急増している。しかし、19年からリセッション(景気後退)により、同市場が調整局面を迎える可能性が高い。2000年代前半のようにCVCを一過性のブームで終わらせないための支援する仕組みが必要だ」
CBインサイツがまとめた17年の世界でのCVCに関するリポートによると、17年に投資活動をはじめた新規CVCは186社と前年比66%増。活動実績があったCVCは合計1067社に上る。米国では12年と比較して、約2倍近く増加。米国のCVC投資額についても、18年1~3四半期のCVC投資額は393億ドル(米PitchBook調べ)。全体の841億ドルの約45%程度を占め、スタートアップ・エコシステムの中でも重要な役割を担っている。
17年に投資件数が多いCVCは、グーグルのCVCであるGV、インテルのインテル・キャピタル、セールスフォース・ドットコムのセールスフォース・ベンチャーズ、クアルコムのクアルコム・ベンチャーズ、ゼネラル・エレクトリック(GE)のGEベンチャーズと続く。
こうしたグローバル企業が積極的に投資を進め、従来のクローズドイノベーションにオープンイノベーションを組み合わせ、破壊的イノベーションの備えやイノベーションのスピード向上につなげる手法は、世界的な潮流になっている。
日本企業の間でも、CVCやオープンイノベーションは急速に普及。トヨタ自動車が15年11月に本格的に参加した未来創生ファンド、17年7月に米シリコンバレーで設立したトヨタAIベンチャーズなどが注目を集めたが、日本経済新聞社の「社長100人アンケート」(17年12月調査)によると、「CVCをすでに設立、検討している企業は約3割強」。
また、M&A(合併・買収)助言会社のレコフによると、大企業の自社ファンドによるスタートアップ投資額は18年上期(1~6月)に前年同期比2.4倍の509億円(国内331億円、海外177億円)、投資件数も前年同期比8割増の122件とともに過去最大となっている。