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2019.02.25 17:00

ジェフ・ベゾスvsイーロン・マスク 世界的起業家たちの「特異なプリンシプル」

イラストレーション=デール・エドウィン・マレー

社会の進化を加速させる世界的起業家でありながら、犬猿の仲である二人。『宇宙の覇者 ベゾスvsマスク』(新潮社)の著者クリスチャン・ダベンポートが語る、彼らが貫く信念とは。


──ジェフ・ベゾス、イーロン・マスク、リチャード・ブランソンという名だたる起業家に取材されたわけですが、まず、彼らの印象は? あなたの目には、どのような起業家として映りましたか。

ベゾスは、私が勤めるワシントン・ポスト紙の社主だが、自著のために一対一のインタビュー取材を受けてもらうまで何カ月もかかった。ベゾスもマスクも極めて思慮深く、じっくり考え、詳細な答えをくれた。

3人は、起業家としての目標も似通っている。宇宙を、誰もが行けるような場所にすることだ。宇宙旅行は極めて高価で危険性も高く、米国政府も米航空宇宙局(NASA)も、人間を宇宙に送る技量を持ち合わせていない。NASAの宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに飛ばすのもロシア頼みだ。

(アポロ11号による人類初の)月面着陸から50年。本来なら月面基地が誕生し、火星への有人飛行計画が進められていてもいいはずだが、現実は違う。だからこそ、彼らは宇宙計画のテコ入れを図りたいのだ。ビジョンもやり方も違うが、新テクノロジーを駆使し、新たな発想でイノベーションを起こそうとしている点は同じだ。

スペースXやブルーオリジンは再利用型ロケットを開発し、旅客機のように何度も使うことで、宇宙旅行のコスト減を狙っている。ヴァージン・ギャラクティックも同様のコンセプトだ。マスクは、スペースXの設立前(注:2002年に法人化)、NASAが火星有人探査計画を進めていないことを知り、火星行きを実現させたいと考えた。彼とスペースXを突き動かしているのは、その一念だ。

不快にさせても正しいことのために戦う

──3人の違いは何だと思われますか。

宇宙に対して大きなビジョンを抱いている点は同じだが、その中身とやり方が違う。

まず、マスクは、米政府との契約にかなりの部分を頼っており、国際宇宙ステーションへの物資運搬事業でNASAと契約を結んでいる。早ければ今年にも、NASAの宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに送り始めるかもしれない。

米国防総省とも、商業衛星や安全保障関連の打ち上げ契約を結んでいる。究極の目標は火星への有人飛行だ。地球に小惑星が衝突するなど、万一のことがあれば、人類も恐竜のように絶滅してしまうから、火星という代替案を準備すべきだというのが、マスクの考えだ。実に野心にあふれた大局的なビジョンである。

一方、ベゾスのビジョンは、人類の生活圏を宇宙につくることだ。これは、米プリンストン大学の故ジェラルド・オニール物理学教授の発案だ。

地球の資源は限られており、人口増に伴って資源は枯渇するが、宇宙空間は太陽光やレアアースなどで満ちている。だから、地球の資源を保護すべく、宇宙で重工業の全生産を行えるようなシステムをつくり上げるべきだという。

ベゾスが高校の卒業式で「地球は自然公園として守られるべきだ」とスピーチしたのを見ても、彼が長年、この考えを温めてきたのがわかる。

ひるがえってブランソンは、一人25万ドル(約2750万円)で、旅行客に(90分間の)宇宙旅行を提供したいと考えている。宇宙から(地球上の)別の場所に移動し、世界中を超高速で回れるような輸送システムの構築も目指している。
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文=肥田美佐子

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