経済情報サイトのトレーディングエコノミクスによると、中国の70都市における昨年12月時点の新築物件の平均価格は、前年比で9.7%上昇。2017年7月以来、44カ月連続での値上がりとなった。
価格の高騰は、平均的な所得の市民にとっても住宅が手の届かないものになることを意味する。それは貿易戦争よりはるかに、長期的な成長の見通しに大きな害をもたらすことになるだろう。
貿易戦争は、一時的な問題に終わるはずのものだ。両国政府がそれぞれ、自国における国家主義的な感情を和らげる方法を見つけることができれば、解決に向かわせることができる。
一方、若い世代が家庭を持つことを妨げる手ごろな価格の住宅の不足は、長年にわたって悪影響を及ぼすだけでなく、「中所得国のわな」や「ルイスの転換点」といったその他の要因によって、一層複雑な問題を引き起こす可能性がある。
さらに良くない点は、中国の主要都市における住宅価格の高騰は、偶然に起きたわけではないということだ。一般的な市民よりも、経済的に余裕のある家主に有利に働くような地方政府の政策が原因となっている。
ルチル・シャルマはかつて、著書「ブレイクアウト・ネーションズ 大停滞を打ち破る新興諸国」の中で、空室ばかりの集合住宅が立ち並ぶ街を「ゴースト・シティー」と呼んだ。そうした都市を数多く生み出したのが、そうした政策だ。
空き物件の大半は、値上がり後に売却しようと考えて物件を所有してきた家主たちが持ち続けている。アパートの多くが市場に出回らないことは大幅な住宅不足を引き起こし、中古住宅の価格もつり上げてきた。
例えば、2003年には1000未満だった上海の中古住宅価格指数は、2017年には4000まで上昇した。これは、婚姻率が昨年、5年前と比べて30%近く下落したことにも関連があるとみられている。
婚姻率の低下は、中国の長期的な経済成長にとって良い話ではない。出生率の低下や労働人口の減少など、その他の問題の発生にもつながる。中国はすでに、ベトナムやスリランカ、フィリピン、バングラデシュなど、労働力の豊富なその他との競争に直面している。
そのほか、少ない労働人口で多くの退職者の生活を支えなくてはならないという「依存比率」の上昇という問題もある。消費支出にも影響が出てくるだろう。投資主導型から消費主導型の経済への転換を目指す中国政府のこれまでの努力にも、影響が及ぶと考えられる。
日本はすでに、こうした問題に直面してきた。日米貿易摩擦が落ち着いた後も、「失われた」年数は増え続け、いまや30年になろうとしている。中国の場合、問題の解決にかかる年数は、日本を超える可能性がある。