「The Robotic Reporter」などの論文があるメディア研究者マット・カールソンによると、報道機関が使っているAIのアルゴリズムは瞬時にしてデータをニュース記事に変換する。実際、AIが最も活用されている分野は数値データを扱う金融・経済関連のニュースだ。
「ブルームバーグ・ニュース」では、「サイボーグ(Cyborg)」と呼ばれるプログラムが企業の財務諸表を分析することで、ニュース記事の大量生産を手助けしている。「フォーブス」にも、草稿の作成時にテンプレートを提供するなどして、記者をアシストするAIの「バーティ(Bertie)」がいる。
「ワシントン・ポスト」が2016年から使っているAI「ヘリオグラフ(Heliograf)」は、1年目だけで大統領選報道を中心に850本もの記事を生み出した。同社によると、ヘリオグラフはビッグデータからトレンドを発見し、記者に記事作成のきっかけを与えるという。
2018年、ヘリオグラフは「Big Data & AI for Media」協会が主催するメディア業界の賞で「最優秀ボット活用賞(Excellence in Use of Bots)」を受賞した。
「LAタイムズ」でもAIが重要な役割を果たしている。主な活躍の場は、アメリカ地質調査所のデータをもとにした地震のニュースと、ロサンゼルス市内で起きた殺人事件の報道だ。同社のウェブサイト「Homicide Report」では、事件の場所や日時、死因、担当した警察官、被害者のジェンダーや人種などに関する膨大なデータを使ってAIが事件のレポートを作成している。
「事実を掘り下げる」のが人間の仕事
これらのAIを活用する報道機関は、「AIはあくまでも記者の仕事を効率化するためのツールであり、記者に取って代わることはない」と主張する。実際にAIのせいで仕事を失った記者はおらず、今後も少なくともしばらくの間はそのような事態は起きないというのが彼らの言い分だ。
報道機関のAI活用に関する「The Verge」の2015年の記事では、AP通信(当時)のフィラナ・パターソンがAIを導入した理由を次のように述べている。「良い記者なら(AIの登場に)危機感を抱くことは当然だ。ただ我々としては(金融記事を担当する)記者が財務諸表の数字に集中しなくても済むようにしたかった」
AP通信によると、AIの導入によって記者が企業収益の記事作成にかけていた時間は20%減り、記事の正確さも向上したという。記者は事実確認などの作業をAIに任せることで、テーマを掘り下げることに集中でき、量より質を追い求めることが可能になる。
AP通信でニュース・パートナーシップ部門のディレクターを務めるリサ・ギブズも、2月5日付の「ニューヨーク・タイムズ」のロボットジャーナリズムに関する記事で「ジャーナリズムはクリエイティブな仕事だ」と語っている。
「報道とは好奇心を持ってストーリーを伝え、物事を掘り下げ、政府の責任を追求し、批判し、ジャッジする仕事だ。だからこそ、記者には(数字の分析ではなく)そこにエネルギーを注いでもらいたいと思っている」
(注:この記事は人間によって執筆された)