先週、米CBSネットワークは大麻事業を展開するエイカーエイジ・ホールディングス(Acreage Holdings)からの、スーパーボウル中継へのCM出稿の申し入れを拒絶した。エイカーエイジ側は500万ドル(約5億4600万円)の広告費用を支払う意向だったという。報道によると、CBS側は拒絶の理由を「ネットワークの広告ポリシーに適合しないため」と説明したという。
エイカーエイジ側としても、出稿を申し入れた段階で拒絶されることは想定内だったはずだ。大麻は現在、全米の3分の2の州で合法化が進んでいるものの、連邦レベルでは依然としてヘロインやLSDと同等のスケジュール1の薬物に指定されている。仮にCBSが放映を行ったとしたら、かなり大胆な動きとみなされたはずだ。
オンエアの拒絶は当然の結果ともいえる。しかし、エイカーエイジ側が告知したかったのは、同社の大麻プロダクトではなかった。同社はこのCMにてんかんに苦しむ子供や退役軍人らを出演させ、大麻がいかに彼らの症状を和らげるかを話し合わせる意向だった。
多くの人々が、大麻が酩酊作用のみをもたらすものだという古い概念に縛られている一方で、大麻に不安や痛みを軽減する作用があることを認識する人々も増えている。
米国のシンクタンク、ピュー研究所のデータでは現在、大麻を合法化すべきだと考える米国人の比率は10人中6人に達しており、この数値は2000年から2倍に増えている。今後、さらに多くの州で合法化が進むにつれて、この数字は上昇していくだろう。
大麻に関する世間の捉え方が変化していく中で、メディア企業も広告における大麻の扱い方を変えていくべきだ。今日では、多くの企業が合法的な大麻プロダクトを販売している。これらの企業がブランドを広く認知させる上で、メディアでの告知は欠かせない。
現状では州ごとに様々な広告基準が設けられており、カリフォルニア州では大麻製品の屋外広告を目にするのは日常的なことになった。一方で、メリーランド州ではインターネット広告を含むあらゆる媒体で、大麻関連プロダクトの告知を禁ずる法案が可決された。
今回のエイカーエイジの広告の件が広く知られることで、大麻プロダクトのテレビCM解禁に向けた議論が喚起されることを期待したい。米国では過去に、アルコールが禁止されていた時代もあったのだ。しかし、現代の米国人にとって、ビールのCMが一切流れないスーパーボウルのTV中継は想像し難いものになっている。