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昨年12月、トマトを栽培する人工衛星がスペースXのロケットによって打ち上げられた。火星や月の重力を再現するために、回転しながら栽培を行うという。

人工衛星「Eu:CROPIS」は、米企業Spaceflight Industriesが主導するライドシェア・ミッション「SSO-A」の一環で、12月3日にカリフォルニア州のヴァンデンバーグ空軍基地から打ち上げられた。

今回のトマト栽培の実験は、人類がいずれ宇宙に住むことを見据えて実施されている。月や火星で長期にわたって生活するなら、ある程度の食料の自給が必要になる。

「大量の食糧を宇宙に輸送するのは難しい」と、今回のミッションの研究責任者でドイツ航空宇宙センター(DLR)に所属する重力生物学者Jens Hauslage博士は語る。

地球は45億年前と比べて大気や気候、到達する太陽光の量、土壌が大きく変化している。しかし1つだけ変わっていないのが重力だ。そして、その重力が生物にどのような影響を与えてきたのかはよく分かっていない。

それを突き止めようとしているのが、上空600キロメートルの軌道を回るEu:CROPIS だ。一辺がわずか1メートルと超小型で、ソーラーパネルがついている。内部は2つのセクションに分かれていて、1つは月の温室、もう1つは火星の温室として実験が行われる。

今後1年間をかけ、4つの姿勢制御装置を用い、異なる速さでスピンを加える。最初の6か月間は1分20回転で月の重力(地球のおよそ6分の1)を再現する。そして次の6か月間は1分32回転で火星の重力(地球のおよそ3分の1)を再現する。

研究チームはいずれの条件でも、トマトが発芽することを願っている。トマトが選ばれたのは、その赤い色がカメラでとらえやすいからだ。この人工衛星に推進装置はついておらず、ミッション後に大気圏で燃え尽きることになっている。

国際宇宙ステーション(ISS)でも、野菜を育てる実験は行われたが、微小重力のもと短期間で少量のレタスを作っただけだ。Eu:CROPISでの実験は、宇宙空間における過去最長の野菜栽培実験となる。

計画通りに進めば、赤く熟した宇宙産のトマトの写真が地球に届くことになる。宇宙船内で野菜がうまく生育できることが証明できれば、大きな一歩となる。私たちの暮らす世界の上空を、赤いトマトが周回する日が待ち遠しい。

編集=上田裕資

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