「ハイ! メルセデス」。末っ子Aクラスから「MBUX」を採用した理由

クルマとの新しいコミュニケーション、多様化する生活のなかでの役割の変化。多様化するクルマのありかたが、われわれの暮らしを変えてゆく。

MERCEDES-BENZ:新しいユーザー体験を提供するMBOXを搭載した「Aクラス」


メルセデス・ベンツのラインアップのなかでも、「Aクラス」ほど、世代ごとのスタイリングの変化が大きなモデルはない。それはつまり、プレミアム・ブランドとして普遍性を重視するメルセデス・ベンツのなかでも、時代の変遷を色濃く表現するクラスということだ。

低くワイドなグリル、ボンネットからルーフへと続くスポーティなライン、サイドの豊かなサーフェイスから構成されるプロポーションは、“メルセデス・ベンツ”というブランドから想起される硬質なイメージとはいくぶん異なる。同時に、一族で最も大型とおぼしくスリーポインテッドスターを鼻先に掲げ、切れ長のフロントランプを備えるなど、ファミリー・アイデンティティを主張する。

最大のポイントは、「MBUX(メルセデス・ベンツユーザーエクスペリエンス)」と名付けられたユーザーインターフェイスを「Aクラス」から搭載したことだ。新機能を旗艦モデルではなく、あえて一族の末っ子から採用したことの理由は、より多くの人が使うことを重視しているからだ。 

コンパクトなボディサイズから想像するより広々とした室内に乗り込むと、目の前に大型ディスプレイが鎮座している。「ハイ!メルセデス」と声をかけると、MBUXが立ち上がり、音声コマンドを使って様々な機能をコントロールできる。なかでも、シート、サイドミラー、メーターパネルのデザイン、アンビエントライトの色など、8人分の設定ができ、MBUXに話しかけることで自分の設定を呼び出せるパーソナライズ機能は面白い。 

重要なのは、メルセデス・ベンツが「Aクラス」で目指していることはなにか、という点だ。それはいたずらな大衆化ではない。「Aクラス」では、人々が日々の暮らしの中で便利に使っている機能を、高級車ユーザーにとって使いやすい形にデザインして提供することで、「高級車の民主化」に挑戦しているのだ。


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#18|機能が美しさを体現する。自動車のデザインにゴールはない。

文=川端由美

この記事は 「Forbes JAPAN 世界を変えるデザイナー39」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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