今後ますます活気づくことが予想されるヘルスケアテックについて、この分野を中心にシリコンバレーで活躍する3人のベンチャーキャピタリストに今年の予測を聞いた。
「予防」でなく「治療」の発展に期待
「大学の技術を活かし、医療のアンメットニーズに取り組む創薬・バイオ・医療機器のベンチャーは無視できない」というのは、シリコンバレー及び日本で、医療機器ベンチャーへの投資やインキュベーションに取り組むMedVenture Partners取締役CMOの池野文昭氏だ。
スタンフォード大学でバイオデザイン プログラムディレクターも務める同氏は、昨今の医療ビジネスについて「世界中で人工知能やアプリを活用したヘルスケアビジネスが非常に人気だ。しかし残念ながら、アプリでは、がん、心筋梗塞、脳卒中を治療することはできない。これらは予防医療や診断のための“Nice to Have”のツールにはなれるが、病気の治療、根治をもたらすための”Must Have”にはなれない」と語る。
その上で注目しているのが、「難治疾患の治療の根源になる科学成果を生み出している」という、大学での最先端の研究成果だ。
「現在のトレンドを追い求めるのもビジネス上重要であるが、物事の本質を理解し、流行に流されずに、真の必須の価値を産み出すビジネスが重要であり、それらが確実に生まれているのもまた、シリコンバレーの底力であり、2019年は、それらが益々盛んになるであろう」
変化がさらなる変化を生む
デジタルヘルスに特化したスタートアップ投資で多くの成功実績を持つKicker Venturesの清峰正志氏は、「2018年は、治療用処方アプリやAI自動診断ソリューションがFDA承認獲得、上市をした歴史的1年だった」と振り返り、話題性が先行している印象もあるが引き続き同カテゴリーに注目だと話す。
また、今年はより多くのソリューションが市場に出ることが間違いなく、現場での実用化が進むにつれ、従来の治療の形や人モノカネの流れ(ビジネスモデル)を大幅に変えていくと見る。その変化がさらなる新しいソリューションを生んでいく可能性もある。
「先進的な企業や医療従事者は、いち早く革新的なソリューションを開発しているベンチャー企業とコラボレーションを進めている。2019年はさらに、グローバル化、加速化していくだろう」