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炎症が、人体にとって危険なものになりうることを示す研究は山ほどある。人間の体は、病気をしたりケガを負ったりした際に、炎症という自然の反応を見せるが、炎症が、関節炎やうつ病、心臓病など、さまざまな慢性疾患につながりかねない場合もある。一部の癌や、神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病など)が炎症と関連があることもわかっている。

しかし、感情的な反応も、炎症を引き起こしたり悪化させたりする原因になるのか、という点については、まだあまりわかっていない。新たな研究はそうした疑問に焦点を当て、配偶者に先立たれたばかりの人々の体内で炎症が増えているかどうかを調査した。その結果、悲しみは炎症を増加させるばかりか、致命的な心疾患に匹敵するレベルの状態を引き起こすことがわかった。

研究チームは、配偶者をなくしたばかリの人100人弱を対象に、インタビューと採血を実施した。すると、「過度な悲しみ」を抱いている人(生きる意味を失ったと感じている人など)の血液は、悲しみがそれほど強くない人の血液に比べて、炎症レベルが17%高かった(「炎症性サイトカイン」というタンパク質のレベルを測定した )。また、悲しみが強い上位3分の1は、下位3分の1の人に比べて、炎症レベルが約54%高かった。

この論文の筆頭著者で、ライス大学のアシスタント・プロッフェッサー として心理科学を研究するクリス・ファグンデス は、「これまでの研究から、炎症は、高齢者がかかる病気ほぼすべてに関わっていることがわかっている」と話す。

「また、うつ病が炎症レベルの上昇に関係があることがわかっているほか、配偶者を亡くした人は、大うつ病障害 、心臓発作、脳梗塞、早死の危険性がかなり高くなることもわかっている。しかし、今回の研究で初めて、抑うつ状態のレベルにかかわらず、悲しみが炎症を引き起こすことが裏付けられた。そしてこうした炎症は、健康に悪影響をもたらす可能性がある」

この研究が示しているのは、まずは、「悲しみのあまり死んでしまう」という昔から使われてきた表現が、思った以上に真実であるという点だ。悲しみは、炎症を引き起こすことで、死を招きうる。それは誇張ではない。

この最新研究は、配偶者に先立たれることで、「遺族の全死亡発生率は高まる」という過去の研究結果を立証している。これは、男性でも女性でも変わりないが、高齢の場合は特に顕著だ。

今回の結果はまた、感情を放置することについて、警告を発している。(配偶者に先立たれて)悲しむのは当然だ。しかし、生きる意味を失うほどの強い悲しみは、さまざまな意味で危険であることを、この研究は示しているように見える。われわれが感情に基づいて行動するかどうかにかかわらず、感情は、健康を蝕みかねない生化学的な影響を持っているのだ。

この研究は、精神神経内分泌学の学術誌『Psychoneuroendocrinolgy』で発表された。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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