店内はカラフルに装飾されていて、娘のルーシーはすぐに窓につるされた緑色のモールを見つけた。私はそれから10分ほど、娘と色々な装飾について話した。子どもは本当になんにでも気づく。
部屋を見回していると、隅の方に妙に静かな空間があるのに気づいた。そこでは家族4人がそれぞれ黙りこくって各自の端末の画面に集中していた。わたしは朝食の間その家族をちらちらと見ていたが、一度たりとも互いに目を合わせず、視線は画面、そしてそのうち運ばれてきた食事のみに合わせていた。
悲しいことに、画面を見るのは私たちの生活でデフォルトになってしまった。飛行機待ちの時間にスマホを取り出す、友人を待つ間に暇だったらスマホを見る、会議が退屈だったらスマホに手を伸ばす──。
ジョージタウン大学で作家のカール・ニューポート教授(コンピューターサイエンス)は、“デジタル・ミニマリズム”と呼ばれる新たな時代を切り開こうとしている。これはテクノロジーの使用に関する哲学であり、自分にとって大切なものを強く補強するような少数厳選の活動にオンラインの時間を集中させる、というものだ。
ニューヨーク大学の経営大学院、スターン・スクール・オブ・ビジネスのアダム・オルター教授は、著書『Irresistible(抑えられない)』で、人々がテクノロジー使用に対して持つ抑えられない衝動と、消費者をつなぎとめるために巨額を投じている各企業に関する研究の結果をまとめている。
携帯電話の使用時間は1日1時間以下にすべきと推奨されているが、調査ではこの基準を満たしているのはたった12%、つまり88%が使い過ぎで、全体の携帯電話使用時間の平均は3時間という結果が出た。
オルターはさらに、若者を対象としたアンケートで、携帯電話を壊すぐらいなら骨を折る方がましだと回答した人は46%に上り、携帯電話が壊れる方を選んだ54%の人々の多くも迷った末に回答したことを明らかにしている。
忙しい現代の社会人にとって、メールは仕事上で最大の要件(継続的な努力とエネルギーを求められるもの)のひとつであり、私が仕事での燃え尽きに関するプレゼンテーションを行う時もこれが良く話題に上る。ある調査では、「米国で働く人のほぼ3分の1が仕事のメール受信後15分以内に返信、4分の3以上が1時間以内に返信している」ということが示された。