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カリスマファンドマネージャー「投資の作法」

世界最大の投資会社バークシャー・ハサウェイを率いるウォーレン・バフェット(右)とチャーリー・マンガー(左)も高齢ながら健在だ。

2008年、世界的な金融危機の真っ只中という過酷な状況下でひふみ投信を立ち上げた筆者。それから10年──。運用資産残高8000億円を超えたいま、さらなる先を見据えている。


筆者が、ひふみ投信の運用を始めてから10年が経過した。

「10年」という言葉で思い返すのは、宮崎駿監督の映画『風立ちぬ』の一場面である。イタリア人の飛行機技師が、主人公に対して「創造的人生の持ち時間は10年だ。芸術家も設計家も同じだ。君の10年を力を尽くして生きなさい」と思いを伝える。これはおそらく、宮崎監督が自分自身に語りかけているのだが、「彼にとっての10年って、いつのことなんだろう?」と気になっていた。

私はいつも毎月の運用コメントに「全力を尽くして運用します」と書いているのだが、それはこの映画の「君」と自分を重ねて、「全力を尽くしているのか」の問いに対して語っているところがある。

2008年、リーマンショックの真っ只中にひふみがスタートして10年経った。この節目で考えているのは、「力を尽くした10年が終わったのか、それとも力を尽くす10年が始まるのか?」という問いである。

10年というのはそれなりの重い時間だ。これまでの10年、次の輝かしい10年のための準備だったのか、それともこの10年が“私の10年”であって、次の10年は誰かに引き継ぐべき10年なのか──いつも自問自答している。

率直に考えて、今、自分にとっての10年はどちらなのだろうか?

ひたすら走ってきたので、疲れたかと聞かれたら疲れたような気もする。だが、力を出し切って力がなくなったかといえば、全然そんなことはなく、ここからもっと力が発揮できる、と思う。

抗うのをやめたことで楽に

私が世間で「カリスマファンドマネジャー」とか呼ばれていたのが32歳頃なのでもう20年経つ。でも、そう言われていた時代より、明らかに今の方が元気だ。20年前を知る人に久しぶりに会うと、「若返っている!」と驚かれる。

当時は32歳だったものの、気持ち的には50歳くらいだった。なんだか疲れ切っていた。50代、60代の経営者と話をして、相手に同年代だと思われている、なんてことがよくあった。

当時、“カリスマ”と呼ばれるのがすごく嫌だった。「カリスマじゃないのに、なぜそう呼ぶのだろう」と考えていた。カリスマというと、先のことが見通せているように思える。

でも私は先のことが見えたことなどない。いつも暗中模索で、明日何が起きるかわからない、明日死んでしまうかもしれないと思っているから、ベストを尽くすしかない。結果として成績が出ているだけなんだけどな、と。きっと期待されていることが重かった。

文=藤野英人

VOL.27

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