2011年3月の東日本大震災、また今年、北海道を襲った大停電など相次ぐ自然災害をうけ、日本では再生可能エネルギーや節電などへの関心は高まり続けているが、TBSラジオの話題は今後、民間企業の電力に対するポリシーに対して消費者の惹きつけていくきっかけになるかもしれない。
ところで、世界的には、再生エネルギー企業が人工知能(AI)に関心をみせているというニュースが報じられている。ドイツの再生可能エネルギー企業BayWaは、DSM Venturing、Maverick Ventures Israel、Rio Venturesなどともに、イスラエルのAIスタートアップRaycatchに投資を行った。
ディープソーラー(DeepSolar)というRaycatchのソフトウェアは、大規模な太陽光発電所の所有者、およびオペレータが投資収益率を最大化できるように支援する。また、エンジニアが設備に対して措置をとるべきタイミングや要素についても解析し、推奨事項を提案してくれるという。
現在、工場などでは各設備から得られたデータをAIが解析し、生産性向上や予兆保全などに用いられようとしているが、ディープソーラーはその「発電所バージョン」という位置ということになりそうだ。
なお、国際エネルギー機関(IEA)は、「再生可能エネルギー市場レポート2017」で、2016年時点で、再生可能エネルギーによる発電の割合が世界的に24%まで拡大したことをうけ、太陽光、風力など、可変再生可能エネルギー(VRE)の統合の必要性とともに、そのリスクについて指摘している。AIは、それら再生可能エネルギーの不確実性を減少させ、効果的なシステム統合を可能にすると期待されてもいる。
例えば、AIとスマートグリッド(電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し最適化できる送電網)などを組み合わせることで、太陽光、風力などの発電量と電力需要を正確に予測したり、化石燃料の発電量を調節し、送電量や貯蔵量を最適化する用途などがそれにあたる。
世界の大手各社も、電力にAIを応用すると取り組みを始めている。グーグルディープマインドは、グーグルのデータセンターの電力制御を行うAIを開発し、電力消費を抑えるプロジェクトを進めている。一方、ゼネラル・エレクトリックは、人工知能を風力発電機のタービン制御、石炭火力発電所のボイラー制御などに適用し発電効率を高め、公害物質の削減を目指している。
今後、電力網にもAIを適用することが計画されており、実現すれば、世界的に約2000億ドルにのぼるコストが削減できるとしている。
現在、ビットコインのマイニングが電力の大量消費を起こすとして問題となっているが、今後、ロボットやIoT機器、高度な演算能力を持ったコンピューターなどが続々と登場する世の中になれば、電力問題や省エネ、節電は、より大きな社会的イシューになる可能性もある。災害やテクノロジーの発展など、さまざまな問題から電力を守ることができるのか。関連テクノロジーやAIのイノベーションに着目していきたい。
連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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