ネット上でさまざまなファンが描いたポケモンキャラクターたちの超リアルで奇怪なイラストに接してきたせいか、筆者には予告編はまるでファンが作った動画のように見える。だが、本作はポケモン社から映画化権を得て製作された、れっきとしたハリウッド映画だ。
予告編はまた、90年代の実写映画「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」の悪夢を彷彿とさせる。ただ同作とは異なり、本作の製作陣は最初から映画をジョークとして作っているようにも見える。そうでなければ、高い声で「ピカピカ」「ピッピカチュウ」などのピカチュウ語を喋ることでお馴染みのキャラクターをライアン・レイノルズに託すはずがない。
実写映画版では、ピカチュウとティム・グッドマンという青年が出会い、行方不明になったティムの父親をともに探す姿が描かれる。レイノルズが演じる、「デッドプール」のキャラとほぼ同じピカチュウの声は、ティムにしか聞こえないという設定だ(ティム以外の人々にはアニメと同じ声でピカチュウ語を話しているように聞こえる)。
CGIのピカチュウは、クレーンゲームの景品のぬいぐるみのような質感を持ち、第一印象は少年時代の筆者にトラウマを与えた「チャイルド・プレイ」のチャッキーと同様に少々不気味だ。その姿で、レイノルズの声で、己のかわいらしさに苛立っているピカチュウというコンセプトには確かに笑ってしまう。
予告編には他のポケモンキャラクターも登場する。実写の街をモンスターたちがうろついている光景はやはり奇妙と言わざるを得ない。ピカチュウのようにフワフワしているのはプリンくらいで、他のキャラクターはビニールのような光沢感がある。中でも異彩を放っているのがバリヤードだ。無数のポケモンキャラクターの中から映画に登場させる面々を選ぶにあたり、特に不吉で不格好な見た目のバリヤードを選んだ製作陣のセンスは謎だが、映画のバリヤードは意外にも愛らしいのである。
この映画を企画した人々は何かの影響下にあったとしか思えない。きっと本編は、高熱の時に見る夢のような世界が展開するのだろう。しかし、筆者はこの映画を見たくてたまらない。笑わせられることは確実だ。商売っ気ばかりが伝わってくる最近のリメイクやリブート作品と比べて、異色のプロジェクトである。そう、異色という言葉がぴったりな作品だ。