しかし実際はそうとも言えない。オンラインショッピングに興じる顧客側はその企業が拠点とする場所など気にも留めない一方で、他よりもデジタル事業の運営に適したロケーションは存在する。必要なのは、ブロードバンド接続などの基本的なインフラが整っていることはもちろん、自分の商品を消費者へ届けるための配送施設へのアクセスが容易な場所だ。
事業運営にかかるコストも、その場所によってまちまちだ。最も明白な例は、オフィスの賃料、または在宅で仕事をする場合に必要な住宅購入費用だ。さらに、資金調達の手段や地元の顧客基盤など、地域からのサポートがあれば一層の助けとなる。
これらの要素は、事業成功のチャンスに差をもたらし得る。特に、初めて起業する場合はなおさらだ。不安定なインターネット接続や高額なコストは、事業成長の妨げとなりやすい。
では、英国でデジタル事業を立ち上げたいと考えるアントレプレナーは、どの都市を拠点とすべきだろうか? アマゾンでの商品販売を支援するサービスを展開するSellics社は、まさにこの問いに答えるための調査を実施した。調査では、オンラインインフラの質、資金調達手段、生活費、会社設立費用などのさまざまな要素に着目し、デジタルビジネスを立ち上げるのに適した都市がランク付けされた。
その結果は意外なものかもしれない。まず、スタートアップ企業が集中するロンドンはランク入りしなかった。また、テクノロジー系ベンチャー企業の集まるオックスフォードやケンブリッジもまたランク外となった。これらの都市は、立ち上げ間もないデジタル事業が生き残るにはコストがかかり過ぎるのだ。
一方で、ビジネス立ち上げに適しているという結果が出たのが、シェフィールド、ノッティンガム、レスターだ。Sellicsの計算によると、それぞれの都市でビジネスを立ち上げ軌道に乗せるには現在の給料の5カ月分に相当する蓄えが必要になる。それでも他の都市よりは低い金額だ。