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2018.10.26

自撮りアプリで5億人を魅了した中国「メイトゥ」が絶不調の理由

Sorbis / shutterstock

かつて月間アクティブユーザー(MAU)4億8000万人を誇り、中国女性らを虜にした自撮りアプリ「美図(メイトゥ)」で知られたメイトゥが今、苦境に陥っている。

香港市場に上場するメイトゥの株価は、今年の1月から60%以上の下落となり、44億ドル(約4900億円)の時価総額を喪失した。中国の厦門(アモイ)に本拠置くメイトゥは競合との戦いに苦戦し、損失を出し続けている。

メイトゥのアプリで自撮りを撮影すれば、目が大きく写り、ニキビが消え、手足も長く見せられるが、このアプリは利益を生み出せていない。世間は、同社のコアビジネスが自撮りアプリだと考えがちだが、実際のところ、売上の70%以上は独自ブランドのスマホの販売によるものだ。

高画質なインカメラを備え、セルフィーの撮影に特化した可愛いデザインのスマホを、同社は230ドルから675ドルの価格で販売している。しかし、中国のスマオ業界ではシャオミやOPPOらが、続々と競合製品を送りだしている。

メイトゥのスマホの売上は、今年上半期に前年比23.4%減の2億1300万ドルとなった。会社全体の売上も前年比5.9%マイナスの2億9600万ドルだった。上半期に同社は1840万ドルの損失を計上した。メイトゥはこれまで、通年で1度も黒字を出していない。

「メイトゥのスマホはニッチなカテゴリに属する製品だ」と調査企業カナリスのJia Moは話す。「彼らのデバイスは消費者の心をつかんでおらず、大手企業の類似製品に顧客を奪われている」

新たな収益源の開拓を目指すメイトゥは先日、香港の富豪の李嘉誠が創業した長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス)との提携を発表し、CKが展開する小売チェーン「ワトソンズ」に、マジックミラーと呼ばれるデバイスを設置する計画を明かした。

このマジックミラーにはメイトゥの顔認証テクノロジーとデータ分析技術が投入され、バーチャル空間で化粧品のトライアルが行える。また、自撮りアプリの画像加工技術をベースとした、化粧品のレコメンドも受けられる。

さらに、メイトゥの自撮りアプリ内にワトソンズが公式アカウントを開設。ユーザーがニキビの修正やしわ取りの操作を行った場合、お薦めの化粧品をレコメンドする機能も追加する計画だ。

この取り組みによって、メイトゥの認知度はさらに高まるだろう。しかし、さほどの収益性は見込めないと上海の調査企業「86 Research」のRobert Cowellは話す。

動画アプリは配信停止処分に

メイトゥの広報担当は、ワトソンズとの提携内容の詳細についてのコメントを控えた。また、今後の収益見込みについても話せないと回答した。同社の会長で著名投資家のCai Wensheng(蔡文胜、マイク・カイ)は、以前のインタビューで「メイトゥの必須課題は、SNSプラットフォームとしての価値を高め、ユーザーの滞在時間を伸ばすことだ」と述べていた。

しかし、状況はさらに悪化している。メイトゥの短編動画アプリの「メイパイ」は今年の3月と6月に、不適切なコンテンツを掲載したことを理由に配信が一時停止となり、アクティブユーザー数は上半期に、56.4%減少した。

同社は写真のシェア機能やライブストリーミング機能を、写真編集アプリに追加したが、テンセントのWeChatらが覇権を握る、中国のSNS界でごくわずかなシェアしか獲得できていない。

86 ResearchのCowellは、こう述べている。「メイトゥが倒産の危機に瀕しているとまではいえない。彼らにはまだ、新たなビジネスに向けて投資を行う余力がある。しかし、業績が上向くかどうかは分からない」

翻訳・編集=上田裕資

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