遡ること7月、三菱UFJ信託銀行の「個人データ銀行」構想が報じられたのを皮切りに、情報銀行(情報利用信用銀行)に関する動きが活発化していますが、そもそも「情報銀行」とはどんな銀行なのでしょうか。
2018年3月にデータ流通環境整備検討会が発表した『AI、IoT時代におけるデータ活用ワーキンググループ中間とりまとめ』によれば、「情報銀行とは、個人とのデータ活用に関する契約等に基づき、PDS(Personal Data Store)等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示又は予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供する事業」と定義付けられています。
すなわち、情報銀行とは、私たち一般の生活者によって預けられたさまざまな個人データ(プロフィールや連絡先、購入履歴、位置情報、健康情報など)を管理し、それらをニーズのある第三者に対して提供する事業体のことを指します。
個人データを預ける私たちは、そのデータを利用したい企業等から何らかのメリットを受けることとなります。一般的な「銀行」は、私たちが預ける「お金」を、それを必要とする企業等の第三者に貸し付けたりするわけですが、「情報銀行」では、私たちの「個人データ」が「お金」の代わりとなります。
企業単位での管理を超えて
こうした行為そのものはこれまでも、情報銀行という形を取らずとも行われてきました。
例えば、お店で商品を購買した際にすすめられる会員登録。企業は会員情報を得ることで、新商品やキャンペーンの案内を直接連絡できるようになり、まだ見ぬ新規客に向けてマス広告を打つよりも、効率的に再購買を促すことができます。逆に顧客側は、その対価として、ポイントやクーポンなど何らかの便益を得ることになります。
こうした情報の取引関係は従来、各々の企業がその顧客から独自に情報を取得し、管理し、適宜活用しているといったものでした。有益な個人データの集積ですので、各企業大切に扱っているものなのですが、「情報銀行」から既存の顧客以外の情報を入手できれば、さらなる商品開発やプロモーションに活かすことができます。
例えば、私が「情報銀行」に個人のプロファイル情報(性別年齢、住居地域、学歴、職業等々)や運動量、健康情報、外食サービス利用履歴情報等を預け、企業への利用を許可しているとします。すると、データ分析により「血圧が高めで、普段あまり歩いておらず、外食が多い」生活習慣病予備軍である姿が浮き彫りになるため、保険業界や食品メーカー、外食産業等が様々なOne to Oneマーケティングをする可能性が考えられます。
情報を提供する個人への対価は、まだ情報銀行側が検討中の事案ですが、1企業当たり500〜1000円程度の報酬やクーポン、実サービスなどが考えられています。
情報銀行は、こうして企業と個人のwin-winの仕組みであると当時に、情報の活用により企業がさらに個人のニーズに適合したサービスを提供できるようになるため、私達の生活はより便利に改善されていくことも期待できます。