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世界を目指す「社内発イノベーション」事例

ソニー提供

新規事業の立ち上げは困難を極めるが、リリース後はさらに難しい。いわゆるJカーブを乗り越えられず諦めたり、デッドラインが厳しすぎて事業を早々に閉じたりするケースを数多く見てきた。新規事業がはじめからうまくいくなど夢物語に近いが、もちろんないわけではない。

今回は、立ち上げ期から着実に成長を遂げているケースを紹介したい。

クラウドファンディングで1億円超え

ソニーのスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラム「Seed Acceleration Program(SAP)」で優勝し、事業化が決定したスマートウォッチ「wena wrist(ウェナ リスト)」は、3年前の8月31日、クラウドファンディングを開始した。

同商品を手がける新規事業創出部 wena事業室 統括課長・對馬哲平氏は、「自分が欲しいと思う腕時計とスマートウォッチの機能美を1つにまとめたもの」から着想を経て提案。SAPの厳しい審査と量産化にあたっての設計から制作段階を経て、世に送り出す機会を得ている。

「会社にwenaプロジェクト開始を認められたことで、正式にプレスリリースを出してクラウドファンディングを募り、多くの支援を受けることができました。それがターニングポイントでした」

その後、国内初となるクラウドファンディングでの1億円超えを果たし、翌年より一般発売も開始。ビームスとのコラボレーションも実現した。

バンドにスマートウォッチの機能を集約

「他社とのコラボレーションは、事業戦略でも重要施策のひとつ」と話すのにはワケがある。

wena wristは時計のバンド部分にスマートウォッチ機能を集約しているため、ヘッド(文字盤部分)を自在に付け替えられる。そのうえで、数多ある腕時計メーカーの中から、wena wristに共感し、ターゲット層を拡大できるところと組むことで購買を促している。


製品サイトでは、ヘッドとバンドのシミュレーションができるようになっている

「コラボレーション先に色味を出してもらえれば」という思いから、wena wristはできる限りシンプルかつフラットなデザインやカラーを採用している。素材はレザー、メタル、シリコンラバーを用意。レザーにいたっては、通常のカード式のFelicaでは折れてしまうため、曲げられるタイプを独自に開発したうえで仕込んでいる。

wena wristを組み合わせれば、長年使い続けてきた愛着あるモデルも形見の時計もスマートウォッチへ姿を変えることができる。日本で腕時計を使うユーザーは平均2〜5本所有が6割を占めている(出典:スイス時計協会「腕時計に関する消費者意識調査 2016」)ことから、バンドだけ購入というパターンも十分考えられるのだ。

これらのアプローチが実を結び、当初想定していなかった女性層も購入者の10〜15%を占めるほどになったという。

今年9月18日には、セイコーとのコラボレーション「SEIKO | wena」を発表。セイコーダイバーズにインスパイアされた機械式と、wena wristシリーズとして初めてとなるデジタル式のモデルを発表した。


seiko wena wrist pro Mechanical head(左)、seiko wena wrist active Digital Solar head(右)/ソニー提供

デジタル式は、遡ること1973年、セイコーが時・分・尺の6桁が表示されたデジタルウォッチを世界で初めて出し、標準規格をつくったことに敬意を表してのことだという。登山用機能を搭載したデジタルのヘッドとタウンユースのwena wristの組み合わせは、アクティブなライフスタイルにぴったりだ。

「今回のコラボレーションは悲願でした」と話す對馬氏。歴史あるSEIKOブランドの名を冠して出すことへの重みを感じているところだという。

文=木村忠昭

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