資産運用の業界を揺るがす大事件があった。以下、毎日新聞(Web、7月23日付)から引用する。
「個人の代表的投資商品である『投資信託』の家計保有額が、日銀の統計作成時の誤りで30兆円以上も過大計上されていたことが判明した。
近年順調に増加しているとされてきた投信保有額が、実際は減っていたことになり、『貯蓄から投資』が進んでいると信じてきた証券業界に衝が広がっている。過剰計上があったのは、金融機関や家計など各部門の資産や負債の推移などを示す『資金循環統計』。
同統計では年1回調査方法を見直す改定を行っており、今年6月下旬発表分の改定値を算出する際に過剰計上が見つかった。2005年以降の数値をさかのぼって改定した結果、17年12月末の家計の投信保有額は、改定前の109兆1000億円から約33兆円少ない76兆4000億円まで激減。個人金融資産に占める投信の割合も、改定前は12年の3.8%から17年の5.8%まで上昇していたが、改定後は14年の4.6%をピークに低下し、17年は4.1%まで下落していたことが分かった。
これほど大きな修正が生じたのは、日銀が、ゆうちょ銀行が保有する投信を個人が保有しているものと誤って計算していたことが原因だ」
私は資産運用会社の社長で、投資信託協会の理事も務めている。貯蓄から投資への流れを作ることに責任の一端を負う。日銀の間違ったデータを信じ、貯蓄から投資への流れが進んでいると思いこんでいた。日銀のデータまで信憑性を確認しなければいけないならば、この国の信用が基盤から崩れることになる。それも3億円とか30億円というレベルではなく、33兆円である。規模が大きすぎる。
いったいこれはどうしたことか。このようなミスではすまされないことがあって、特に日銀の謝罪があるわけでもなく、関係者に処罰が下されたわけでもない。非常に解せない。
個人金融資産は、約1800兆円あるはずだ(「はずだ」といったのは、日銀のデータを信じられなくなっているからでもある)。記事に従えば、投資信託の家計に占める比率は、14〜17年で下落していたことになる。
資産の流出で、日本は貧乏に
要するに、貯蓄から投資なんかまったく進んでおらず、むしろ投資から貯蓄になっていたということである。日経平均株価はこの間、1万4000円台から2万4000円程度まで上昇をしている。投資信託をただ保有しているだけでも、70%は増えていたはずだ。増加分を考えると少しだけ売却をしたというレベルではなく、投資信託を“売りまくって”現金に換えたということがわかる。