ポールは数カ月の間にジョン抜きで会議を開くようになり、顧客サービスセンターを移転するとしたジョンの決断を覆したり、事業の他分野への影響や複雑性を考えることなく新商品に投資したりした。ポールは、自身の決断を裏付けるデータや詳細を挙げることができなかった。
こうした問題を問いただしたところ、ポールはジョンに「詳細は気にせず、私を信用してください」と言った。ポールはジョンに信用されていないことを理解していたのだ。これ以降、ジョンはポールをますます信用しなくなった。
あなたは自分の部下をどれくらい信用しているだろうか? 信用することは、部下の仕事の細かい部分に口を出さないことなのだろうか?
ロバート・ソロモンとフェルナンド・フロレスは共著書『「信頼」の研究―全てのビジネスは信頼から』で「信用に必要なのは行動、特にコミットメントだ。コミットメントを立て、それを守ること」と述べている。
信頼する前に、次の3つのコミットメントを求める
信頼につながるコミットメントは3つあり、1つだけ達成しても効果はない。あなたが心に秘めていることを部下に達成してもらうことはできないので、自分が望むコミットメントは明確に述べることが必要だ。直属の部下には、次のことを求めていると言おう。
・期待値を管理すること
上司は部下に一定のパフォーマンスを期待するが、上司の期待値を管理する責任は部下にある。部下は上司に、成果やタイミング、チームに関して期待できることや仕事の基本情報を報告すべきだ。
・約束を守ること
今日3時に一緒にコーヒーを飲みましょうと言っていたのに待ち合わせ時間に現れなかったら、その人への印象はすぐに損なわれる。言葉は約束だ。上司は、部下が約束を守ると信頼できなければならない。
・報告漏れをなくすこと
新たな戦略を採用すること、締め切りを逃しそうなこと、品質に問題があること、誰かが会社を辞めることなどを知ったチームのメンバーは、すぐに上司のあなたに報告する義務がある。重要な情報なしに人を管理することはできないからだ。
完璧な人などいない。チームの中で最も信頼できる部下が、あなたの信頼を損ないかねない行動を取ることもある。ソロモンとフロレスは「信頼違反をしたからといって、そこで信頼関係が終わるわけではない。これは信頼を築くプロセスの一部だ。違反には、間違いや裏切り、背信行為までさまざまなものがある。重要なのは、違反を起こした部下を混乱させたり、全ての違反が裏切りだと考えたりしないこと」と書いている。どの違反が裏切りに当たるかは、本人と話さなければ分からない。