場所は歴史的建築として名高い東京・九段の旧山口萬吉邸(kudan house)だ。9月から「kudan house」と名付けイノベーションハブとして運営。今回は会期の3日間、一般公開している。
舘鼻氏は昨年にも表参道ヒルズで個展「舘鼻則孝 リ・シンク展」を開催。今回は「日本の『香り』文化をRETHINKする」をテーマにした。
ヒールレスシューズは、舘鼻氏が日本の伝統文化を学んだ大学時代に研究していた花魁ファッションの、遊女の履く高下駄を現代的解釈で卒業制作として発表したもの。
会場にはヒールレスシューズのほか、「源氏香図」の呼ばれる紋様をモチーフとした香炉などの作品も多数展示している。
3階建ての各階には別々の香りが広がり、展示とともに心が揺さぶられる。香りは京都の香老舗・松栄堂によるものだ。
会場内の和室では松栄堂の協力を得て「聞香体験」を実施している。3種類の香木を温め、それぞれの香りを「聞く」ことで日本の「香」の魅力を再発見できる。
日本文化として「香り」を捉えなおす本展のコンセプトに共感し、JT(日本たばこ産業)が協賛。JTの加熱式たばこ「プルーム・テック」を収める舘鼻氏の作品「Theory of the Elements.2018」も展示・限定販売している。 職人により、鮑貝の螺鈿細工と漆調の溜塗で仕上げられた作品は、ぜひ手に取って触れてみたい逸品だ。
「Theory of the Elements」は遊女の煙管から着想を得たという。「プルーム・テックには、たばこへのリシンクが具現化されていると感じました。本作を実際に使っていただくことで日本文化へのリシンク、そして、たばこへのリシンクを感じてもらいたいと思います」と舘鼻氏。
舘鼻則孝
1985年、東京生まれ。歌舞伎町で銭湯「歌舞伎湯」を営む家系に生まれ鎌倉で育つ。シュタイナー教育に基づく人形作家である母の影響で幼少期から手でものをつくることを覚える。東京藝術大学では絵画や彫刻を学び、後年は染織を専攻する。遊女に関する文化研究とともに日本の伝統的な染色技法である友禅染を用いた着物や下駄の制作をする。近年はアーティストとして、国内外の展覧会へ参加している。2015年12月に和敬塾本館で開催した「舘鼻則孝:面目と続行」展では、JT(日本たばこ産業株式会社)の「Rethink」の考えに共鳴し、日本各地の伝統工芸士とともに制作した現代的な煙管作品「Theory of the Elements」を発表した。 2016年3月には、仏カルティエ現代美術財団にて人形浄瑠璃文楽の舞台を初監督「TATEHANA BUNRAKU :The Love Suicides on the Bridge」を公演。2017年8月、日本文化の過去と未来を往来し、自身の制作ルーツを見直す展覧会「舘鼻則孝リ・シンク展」を表参道ヒルズにて開催。 作品は、ニューヨークのメトロポリタン美術館やロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館など、世界の著名な美術館に永久収蔵されている。