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シネマ未来鏡

d13 / Shutterstock.com

製作費わずか300万円、監督も俳優もほとんど無名、6月23日に都内2館のミニシアターで始まった映画が、8月3日から全国80館近い劇場で拡大公開となる。新たな劇場のなかには、国内では1位2位の動員力を競うTOHOシネマズ日比谷やTOHOシネマズ新宿なども含まれ、映画ビジネスの世界でひさびさに生まれたシンデレラストーリーとして注目を集めている。

映画のタイトルは「カメラを止めるな!」。監督や俳優の養成スクールであるENBUゼミナールの「シネマプロジェクト」から生まれた作品だ。

このプロジェクトの7本目の作品として監督のオファーを受けた上田慎一郎が、かねてから温めていた、前半と後半で設定がらりと変わる二重構造の作品を提案。映画製作が実現した。脚本はENBUゼミナールで教鞭をとる映画監督などからもアドバイスを受け、上田自らが執筆した。

37分をワンカットで

「二重構造」と書いたが、この映画は、最初の37分間、ゾンビ映画を撮るために山奥の廃墟で撮影を始めたクルーの前に、本物のゾンビが現れるという物語が展開される。特筆すべきは、これがすべてワンカットで撮影されていることだ。カメラは1度も止まることなく、登場人物たちを追い続ける。

ワンカットの長回しは、俳優たちには習熟した演技や、スタッフには秒単位のタイミングが要求されるが、この37分間のゾンビ映画は、見事にそれらを達成している。37分間のワンカットは、都合6テイク、撮影されたということだが、採用されたのは最後のテイク。血糊がレンズにかかったりして、ハプニングが思いがけない効果をもたらした場面もあったという。

そして、ゾンビ映画が終わり、「カメラを止めるな!」というタイトルが登場すると、いよいよ「本編」が始まる。ネタバレを承知で書いてしまうと、以降は、これまでのゾンビ映画の「謎解き」となるドラマが展開される。

これが抱腹絶倒、とにかく面白い。ゾンビ映画の各場面の裏事情が、ちりばめられた伏線を回収するかのごとく、すべて明らかになり、ストンと胸に落ちてくる。前半のゾンビ映画のおどろおどろしさと比べると、かなり笑いと爽快感に満ちたものとなっている。

何故この最初37分間のゾンビ映画がつくられたかも、ドラマの展開とともに徐々に明らかとなり、最後はこの映画最大のハイライトシーンでもある「組体操」の場面が登場する。何度練習しても失敗していた(本番では奇跡的に15秒間成功した)出演者総出の組体操が、何のためにあるのかは、映画を観てのお楽しみだ。

文=稲垣伸寿

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