キャリアには大きく「外的キャリア」と「内的キャリア」があると言われる。会社・部署・役職・資格など外から可視化されたものが「外的キャリア」であり、働きがい・やりがいなど心の中で感じるものが「内的キャリア」だ。
かつては「外的キャリア」が今よりも価値を持っていた。「〇〇会社の部長」というだけで認められることもあり、目指すステイタスになりやすかった。しかし日本型終身雇用慣行が崩壊し、ポスト不足が生じるなかで、そうした概念は薄れていった。
また労働市場の流動性が増すなかで、肩書きだけでは価値が伝わらず「何ができるのか」「どんな実績があるのか」といった能力やスキル、あるいはパーソナリティが重視される度合いが強まった。個々人も、その会社でどんな経験が積めるのか、自身はどんな貢献ができるのかといったことへより意識が向くようになっているのではないだろうか。
どうしても譲れないものはなにか?
『キャリア・ダイナミクス』を著したエドガー・H・シャインは「キャリア・アンカー」という考え方を説いている。これは「個人がキャリアを考えるうえで、どうしてもそれだけは絶対に外せない拠りどころとするもの」を指すものだ。「キャリア・アンカー」に今の仕事が重なっていれば、キャリア自律もしやすく、パフォーマンスも発揮しやすい。しかしもし重なりがなければ、その職場で仕事を続ける意味を見失ってしまう。
もちろん、自身の希望が100%満たされる職場で働くことはほとんどない。むしろ、ある程度のギャップは自らの力で埋めていくくらいの気概が必要だろう。またキャリア・アンカーは固定されたものではないので、自身の成長に合わせて変化することもある。
大事なのは、個々がキャリア・アンカーを自分で考え続けることができること、そしてキャリア自律をし続けることができることだ。その状態になれば、自身の成長と事業の成長を重ね合わせながら、自律的に仕事ができるようになる。