Dirt Protocolの創業者でCEOのYin Wuは、現在29歳。スタンフォード大学出身の彼女は連続起業家で、2社目の企業「Double Labs」を2015年にマイクロソフトに売却していた。
Wuが目指すのは、トークンベースのウィキペディア的な情報プラットフォームだ。仮想通貨のICOでは、プロジェクトの信頼性を水増しするために、アドバイザーに無関係な人物の名を記載するような詐欺的行為が行なわれている。
Dirt Protocolのプラットフォームは仮想通貨の情報レジストリーとして機能し、ICOを行なうチームが情報掲載を行なう場合には、「ステーク」トークンを用いて信頼性を担保する。また、異議を申し立てる場合にもトークンを用いた投票が必要となる。
同社の最終的なゴールは信頼性の高いICOプロジェクトのリストを作ることだ。ウィキペディアと同様に、情報の編集も可能だが、ステークホルダーの承認を得ることが必要となる。
Wuは今後の数カ月で、仮想通貨のマーケット情報に特化した情報レジストリーを立ち上げる計画だ。また、レスランの口コミサイトのレビューの真贋を見分ける投票システムなどが、このプラットフォームを用いて構築されることも想定しているという。
Dirtの名称は「Decentralized Incentive Registry Token(非中央集権型インセンティブ・レジストリー・トークン)」の頭文字に由来している。
収益化に向けてDirtのメンバーらは一定量のトークンを保有し、サービスの拡大によってその価値を高めようとしている。同社はまた、このプラットフォームに参加する外部企業からも利用料を得ようとしている。これは、オープンソースのデータベース企業の「MongoDB」のマネタイズの仕組みと似たものといえる。
類似プロジェクトの失敗事例も
しかし、こういったプラットフォームに利用者を呼び込むのは容易なことではない。今年4月にも同様なレジストリー系のプロジェクト「AdChain」がローンチされたが、まだ成功と呼べる段階ではない。
AdChainはブロックチェーンを利用した広告系サービスで、信頼度の高いウェブサイトのレジストリーを作り上げようとしている。しかし、運営者のMike Goldinによると現在、60のパブリッシャーがリストに加えられたものの、トークンの利用率は非常に低いという。
Goldinによると、現状ではトークンのインセンティブがうまく機能していないという。彼はDirtのプロジェクトに関しても「事前に慎重なシミュレーションを実施してから立ち上げたほうがいい」と述べた。
「AdChainのチームからアドバイスを得られて、とても感謝している。でも、私たちのアイデアが本当に機能するかどうかは、実際にプロダクトを立ち上げてみるまで分からない」とWuは話した。彼女は3人の共同創業者とともに、さらに4名のエンジニアを採用しようとしている。Dirtは今年秋のプロダクトのローンチを予定している。