先ごろフォーブスのインタビューに応じたウォールは、同社が現在、初期段階にあるブロックチェーン技術の産業利用について試作・試験を行っていることや、部品の製造と管理における同技術の有用性などについて語った。
デジタル技術を使って部品の設計を行い、それとは別の場所で3Dプリンターを使って生産することが増えるなか、製造業向けの3Dプリンターを手掛けるHPは特に、ブロックチェーン技術に関心を持っている。メーカー各社は部品とそれに関連する権利を巡る全ての情報をブロックチェーン上に記録することで、自社製品の設計その他をより厳格に管理することができる。
ウォールは、「部品の模倣は間違いなく大きな問題だ。ブロックチェーン技術はこの問題を巡る状況を根本的に変えるだろう」「非常に興味深く、非常に破壊的な技術だと思う」と語る。
ブロックチェーンの産業利用が実現するのはまだ数年先の話だろう(ウォールは2~5年先と考えている)。また、その実現はコストと、製造業における大量生産に3Dプリンターがどれだけ急速に根付くかにかかっている。
ただ、そのような未来がどのようなものになるか、それは現時点でも想像することができる。設計者から製造に関する権利の保有者、製造されている数量まで、部品に関する全ての情報をブロックチェーン上に記録することが可能になるだろう。
製造がデジタル化され、ソフトウェアを使って設計が行われた場所とは別の場所、例えば地球を半周するほど離れた場所で3Dプリンターを使って生産されることもあり得る状況において、ブロックチェーン技術があれば製品の生産過程を全て一元管理することができる。
また、3Dプリンターで作られた部品には生産の過程で、“裸眼では見えず、ブロックチェーン上でのみ確認可能な透かし”のようなものを入れることができるという。
「(透かしがあることで)…部品が真正であるか、所有者が誰であるかを確認できる」「素材をプラスチックにしようと金属にしようと、私が設計した部品に関わる知的財産権は私が持つ。そして、生産されたその部品がサプライチェーン上のどこにあるか、私たちは常に追跡・確認することができる。それが、ブロックチェーンが製造業において重大な意味を持つ理由だ」
製造のデジタル化が進む一方で、業界内にはそれに対応する基準がまだない。ウォールはこれについて、最終的にはそうした基準が必要になるとの考えだ。また、製造の分散化が進むなかで、税金や関税、雇用に関連する問題など、政策立案者らが検討すべき点もあると指摘している。