6月22日の取引終了時刻のフォーブスのリアルタイム・ビリオネアランキングで、マードックの資産額は192億ドル(約2.1兆円)と算定された。21世紀フォックス株の値上がりにより、マードックは数日の間で12億ドルの資産を増やした。
ウォルト・ディズニーは6月20日、米21世紀フォックスと新たな買収計画で合意した。ディズニーはフォックスの映画やテレビ事業の大半を713億ドル(約7兆8千億円)で買収する。ディズニーはフォックスに対し、昨年12月に524億ドルを提示していたが、コムキャストが650億ドルで買収合戦に参入したのを受けて、大幅な増額を行なった。
買収対象にはフォックス傘下のナショナルジオグラフィックチャンネルや、地域スポーツネットワークのFXも含まれる。さらに、ストリーミングのHuluの支配権の3分の1や、欧州のTVネットワークのSkyやインドのTV局のStarも含まれる。
米国では6月12日に連邦地裁が、通信大手AT&Tによるタイム・ワーナーの買収を承認したことでメディア企業に対する期待が膨らみ、フォックスの株価も上昇していた。ディズニーによる買収成立の報せを受けて、フォックスの株価はさらに急上昇を遂げた。
マードックの資産額の80%以上をフォックス株が占めており、株価の上昇で彼は莫大な額の資産を増やした。ただし、コムキャストが条件を引き上げて再度、フォックスに買収提案を行なう可能性は残っており、その場合マードックはさらに資産増が見込める。
背景にはコムキャストCEOのBrian Robertsと、ディズニーCEOのボブ・アイガーが長年のライバル関係にあることがあげられる。
フォックスグループ内部では、トランプ政権寄りのスタンスをとる「フォックニュース」の報道について、映画部門の「フォックスタジオ」関係者から非難の声があがっている。Fox Newsの報道姿勢が結果的に、トランプ政権の移民の親子引き離しを招いたというのが映画関係者の主張だ。
人気ドラマ「ファミリー・ガイ」や映画「TED」で知られるセス・マクファーレンは、フォックスで働くことが「恥ずべきことだと感じている」とコメントした。
そんな状況下で大幅な株価上昇を遂げたことは、フォックスの経営陣としては嬉しいことに違いない。
傘下にはWSJや英タイムズも
マードックのメディア帝国はフォックスのみならず、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)や英タイムズ、ニューヨーク・ポストなどの活字メディアも傘下に持つ。オーストラリア出身のマードックは20代で事業を興し、1952年に父からメディアビジネスを受け継いた。その後の10年で彼はオーストラリア各地の新聞を買収し、メディア事業を英国に拡大。タブロイド紙のザ・サンも傘下に収めた。
マードックは1974年に米国に移住し、新聞や雑誌メディアを次々と買収した後、80年代に入ってテレビや映画業界に手を広げた。その後、1996年にニュースと保守的言論に特化したメディア「フォックニュース」を立ち上げた。
現在87歳のマードックに関しては、後継者問題も世間の注目を集めている。彼にはJamesとLachlanの2人の息子がいるが、買収成立後のフォックスを率いるのはLachlanになるとみられている。