しかし、マツオカは数学と物理の知識を活かしてテニスバディ(テニスの補助的役割を果たすロボット)を作ろうと思い立ち、1998年にMITで電気工学とコンピュータ科学の博士号を取得した。
現在、スマートホームデバイスで知られる「ネスト」のCTOとなった彼女は、自身の夢への道を軌道修正し、エネルギーコストを抑えるサーモスタットの開発に専念している。
先日開催されたフォーブスの女性サミットの場で、マツオカはこう話した。「長期的視野で考えた場合、自分の人生においてテニスバディが最高のゴールとは思えなかった。本当に世間に役立つデバイスを作ることが自分のミッションだと思った」
2010年に創業間もないネストに参加したマツオカは、電気やガスの消費を10%抑えられるデバイスを開発し、年間で約100ドルのコスト削減が可能な製品を世に送り出した。ネストのサーモメーターの小売価格は150ドルから250ドルで、5、6年も使い続ければ、デバイス自体の価格の何倍ものコストを削減できる。
現在46歳のマツオカは2000年代初頭、カーネギーメロン大学の助教授として務めていた。当時の教え子だったのが、ネストの共同創業者のマット・ロジャースだった。
今年2月、グーグルの親会社のアルファベットはネストをグーグルに再統合させることを発表した。その後、ロジャースはネストを去り、自身が設立したラボの「Incite.org」の業務に集中する意向をアナウンスした。
ネストは2014年に32億ドル(約3500億円)でグーグルに買収されていた。しかし、その後の3年間はアルファベット傘下のグーグル内の独立企業として運営を続けてきた。マツオカによると、今回のグーグルとの統合はネストに前向きな影響をもたらすという。今後、ネストはグーグルホームのアシスタント機能との連携を深めていく。
ネストが旗艦デバイスのサーモスタットを立ち上げたのは2011年10月のことだった。マツオカによるとネストは累計で230億キロワット時のエネルギーを節減した。これは、米国のすべての父親たちが1万6000マイル(約2万6000キロ)を電動バイクで走行するために必要な電力に相当するという。