この法案には外部のウェブサイトにリンクを貼る行為に著作権料を請求できる権利(通称、リンク税)や、ウェブ上のコンテンツが著作権違反でないかのチェックを義務づける条項が盛り込まれている。
これらの2法案はEUの「デジタル単一市場」における著作権の在り方を審議する欧州法務委員会(JURI)で、激しい反発を浴びつつも可決された。
このうち、リンク税にあたる法案の11条は賛成が13票、反対が12票という僅差で可決された。この法案はいかなるウェブサイトも外部サイトにリンクを貼る場合は、そのためのライセンス料を支払うことを求めている。
「電子フロンティア財団(EFF)」はこの法案がインターネットの自由を脅かすものだと述べている。「これはウィキペディアのような情報共有の仕方を不可能にする動きであり、社会に大きな不利益をもたらすことになる」
EUがこの法案を通過させたことは、にわかには信じがたい。スペインでも過去にリンク税の仕組みが導入されたことがあったが、激しい反発により撤回された。ドイツでも類似した法律が施行されたが、パブリッシャ―のサイトのアクセスが急減したため、権利者らは彼らの権利を放棄する動きに出た。
一方で「コンテンツ認識システムの義務化」を定めた13条は賛成15票、反対10票で可決となった。この法案は投稿される全てのコンテンツが、著作権違反でないかをデーターベースと自動的に照合する仕組みの導入を運営者に義務づけるものだ。
この規定に関しては以前から、ネット上の風刺やパロディにまで影響を与える可能性が指摘されてきた。しかし、今回の法案には風刺やパロディに関しては例外とみなす規定が盛り込まれており、コンテンツの権利者が不服を申し立てる場合はその理由を開示する必要があるとされている。
しかし、13条が成立すればコンテンツの権利者らは、彼らを批判しようとする勢力を今より簡単に排除できるようになるのは確実だ。また、この法案が規定する「データーベースとの照合」はユーチューブのコンテンツIDシステムと同様なものであり、全く問題がないコンテンツが排除されてしまうケースも十分起こり得る。
フェイスブック等の大手には有利に
さらにいうと、このシステムの導入には莫大な費用がかかるため、フェイスブックやグーグルといった大手企業を有利にしてしまう可能性もある。また、コンテンツの権利保有者ではない第三者がこの仕組みを悪用し、政治的な議論を封じこめる動きに出る可能性も考えられる。
今回の法案に異議を唱える団体「Open Rights Group」のJim Killockによると、法案の成立の阻止にむけての時間はまだ残されているという。これらの法案は、7月の欧州会議での評決を受けなければならない。
「欧州議会の義務は、不公平で不当な法律から市民たちを守ることだ。議会のメンバーらはこの法案を廃案に持ち込むべきた。ロボットがあらゆる画像やテキストなどのコンテンツをふるいにかけて、何の罪もないコンテンツまでが排除されてしまうような事態は、絶対に避けなければならない」とKillockは述べた。