制裁が発表された4月中旬以降、ZTEの株式は取引停止となっていた。しかし、先週から香港市場と深セン証券取引所で取引が再開されると、わずか3日間で時価総額が60億ドル(約6600億円)も下落した。
ZTEは6月8日、制裁解除の条件として14億ドル(約1540億円)の罰金支払いと経営陣の刷新を行うと発表した。米商務省は今年4月、ZTEがイランと北朝鮮に対する禁輸措置に違反したとして、同社がクアルコムやグーグルなどの米企業からスマホや通信機器向け部品を調達することを禁じていた。ZTEは7万5000人の従業員を抱えるが、制裁により事業の大半が操業停止に追い込まれていた。
米トランプ政権は、中国政府との貿易協議を経てZTEへの制裁解除を決定したが、米議会上院はこれを阻止する項目を盛り込んだ国防権限法案を賛成85、反対10で可決した。だが、法案の成立には上下院での調整が必要で、ホワイトハウスが追加項目を削除する可能性はまだ残されている。こうした政治的不透明さに加え、ZTEは多くの困難な課題に直面している。
ZTEにとって最大の懸案事項は、2カ月前の制裁発動から拡大を続ける損失だ。調査会社「フォレスター」のアナリストのCharlie Daiは、既存契約の不履行と機会損失を合わせた損失額は20億ドルに上ると推測している。また、証券会社「ジェフリーズ」のEdison Leeによると、ZTEは昨年7億1000万ドルの純利益を計上しているが、今期は一転して赤字に陥る見込みだという。ZTEからコメントは得られなかった。
経営陣を総入れ替え
ZTEにとって急務なのが経営陣の刷新だ。米政府との合意内容によれば、ZTEは今後30日以内に殷一民(Yin Yimin)会長と趙先明(Zhao Xianming)社長を含む全ての取締役会メンバーと経営陣を交代させなければならない。同社は先週、既に8人の新しい取締役を指名したと発表した。また、同社は当面の資金を確保するため、中国の政府系銀行2行に対し107億ドルの融資枠設定を要請した。
経営の混乱はZTEの回復を一層困難にするとDayは指摘する。「売上の減少を止めるには少なくとも12カ月が必要だ。経営陣の刷新は必須であり、巨額の借り入れも大きな負担となる」と彼は話す。
ZTEの創業者の侯為貴(Hou Weigui)は1985年に同社を設立し、2016年3月に会長の座を退いた。これは、米商務省が米国のテクノロジーを搭載した製品をイランや北朝鮮に違法に輸出したとしてZTEに対して制裁を突き付けた時期と重なる。
ZTEにとって明るいニュースは今後、5G関連の支出の急増が見込まれることだ。アナリストの一部は、今後2年で5G関連の収益によって損失の一部が相殺されると予測しているが、それでも長期的な損失の回復には遠く及ばない。