韓国の富豪リストで急浮上「仮想通貨ビジネス」の出資者たち

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フォーブスは6月6日、「韓国の富豪ランキング」を発表した。1位はサムスン電子会長の李健熙で資産額は206億ドル(約2.3兆円)。2位は製薬大手「セルトリオン」CEOのSeo Jung-Jinで資産額は110億ドル。3位はサムスン電子副会長の李在鎔で資産額は79億ドルだった。

上位50名が選ばれた今回のランキングで注目すべきは、仮想通貨やブロックチェーン関連に投資を行なう人物たちの台頭だ。5位にランクインしたのは、ゲーム企業「NEXON(ネクソン)」創業者のKim Jung-Ju(50)で、資産額は71億ドルとされた。Kimは韓国初の仮想通貨取引所「Korbit」の株式の83%を保有している。

韓国では昨年から仮想通貨バブルが発生し、多くの人々がこの分野に進出した。今年2月にフォーブスは「世界の仮想通貨長者ランキング」を発表。その19位に入ったのが仮想通貨取引所「UPbit(アップビット)」を設立したSong Chi-Hyungだった(ただし、Songは今回の「韓国の富豪ランキング」には登場していない)。

韓国における仮想通貨の取り引き額は昨年、世界3位に達した。人口が約5千万人の韓国で、推定300万人もの人々が仮想通貨のアカウントを保有していたとのデータもある。ブームが加熱するなかで、韓国における仮想通貨の相場は米国よりも30%から50%も高いものになり、これは「キムチプレミアム」と呼ばれるようになった。

背景には韓国では土地や株に魅力を感じなくなった投資家らが、仮想通貨を新たな投資先に選んだことがあげられる。スマートフォンの普及率が非常に高い韓国で、リスクを恐れない投資家らが一斉に資金を仮想通貨に注ぎ込んだ結果、狂乱的なバブルが発生した。

その後、政府が仮想通貨取引への規制を強めたことにより、今年1月以来、キムチプレミアムは解消されつつあり、相場も落ち着きを取り戻した。しかし、大手企業や銀行らは引き続き仮想通貨やブロックチェーン領域への投資を続けている。

前述のNEXONや、「SmileGate」「ネットマーブル」「NHNエンターテインメント」といったゲーム企業らは今後、仮想通貨をゲーム内のコインとして用いるプランを描いている。

下記に今年の「韓国の富豪ランキング」に登場した、仮想通貨およびブロックチェーン関連ビジネスとの関わりを持つ人物を紹介する(冒頭の順位は「韓国の富豪ランキング」における順位)。

5位 Kim Jung-Ju
ゲーム企業「NEXON」創業者、資産額:71億ドル
Kimは自身が設立した投資企業「NXC」を通じて、韓国初の仮想通貨取引所「Korbit」の株式の83%を保有している。Korbitに対する第一弾の投資は昨年9月のことで、65%の株式に対し8500万ドルを支払った。

8位 Kwon Hyuk-Bin
ゲーム企業「SmileGate」創業者、資産額:43億ドル
Kwonが運営するSmilegateは今年2月に韓国のブロックチェーン企業「The Loop」と提携を結び、ゲーム内で仮想通貨が使える仕組みを構築しようとしている。

9位 Bang Jun-Hyuk
モバイルゲーム企業「ネットマーブル」会長、資産額:29億ドル
ネットマーブルは今年2月、ブロックチェーンテクノロジーの開発を行なうと宣言した。関係筋は同社が仮想通貨をゲームに導入するとみている。

13位 Kim Beom-Su
アプリ企業「カカオ」創業者、資産額:26億ドル
Kimは韓国のフィンテック企業「Dunamu」の株式の22%を保有する。Dunamuは昨年10月設立の韓国最大の仮想通貨取引所「Upbit」を運営している。カカオからも出資を受けるUpbitは、140種類以上の仮想通貨を取り扱う。

35位:Lee Joon-Ho
ゲーム企業「NHNエンターテインメント」会長、資産額:12億ドル
Lee が会長を務める「NHNエンターテインメント」は、今年1月に韓国進出を果たした仮想通貨取引所「OKCoin」の出資元だ。OKCoinは中国で設立されたが、中国政府が仮想通貨取引を禁止したため韓国に進出した。

40位:Lee Sang-Hyuk
テック系インキュベーター「Yello Mobile」創業者、資産額:11億ドル
モバイルアプリ関連に投資するYello Mobileは昨年9月、韓国有数の仮想通貨取引所「Coinone取引所」を傘下に持つ「Dayli Financial Group」の株式の52%を約1億ドルで取得した。

48位:Lee Hae-Jin
検索エンジン企業「NAVER」共同創業者、資産額:9億4000万ドル
韓国最大のサーチエンジン企業であるNAVERは、ブロックチェーン及びその他の先端テクノロジー領域に、今年の第1四半期だけで3億ドルに及ぶ資金を投資した。NAVER傘下のメッセージアプリ「LINE」は、日本の子会社を通じてデジタル決済を導入しようとしている。

編集=上田裕資

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