ベン&ジェリーズのロンドンのソーホーにある店舗ではこのほど、ブロックチェーン技術を使って炭素クレジット(排出枠)を取引する試験プロジェクトを始動させた。街なかにある店舗では、初の試みとなる。
自社の事業が環境に与えた影響を相殺するためのもので、アイスクリームを1つ販売するごとに、その売り上げの一部を森林保護プロジェクトからの排出枠の購入に充てる。また、環境保護への影響力を倍増させるため、購入した人にもごく少額の寄付を呼び掛ける。
炭素クレジットの問題点
どの店で売られている商品でも、ほぼ全てがその店内に並ぶまでに温暖化ガスを排出している。アイスクリームは乳牛の放牧からエネルギーを消費する冷凍プロセスや車両輸送に至るまで、全てが温暖化ガスを排出する。
環境に配慮するベン&ジェリーズや英小売大手マークス・アンド・スペンサーなどの企業は、何年も前から排出枠を購入してきた。企業が排出枠を購入することで環境関連のプロジェクトが受け取る資金は、風力発電所や水力発電所の建設、植樹などのために使われている。
ただ、排出枠の問題点は、それらが企業や業界の単位でしか機能しないということだ。企業は大量にまとめて排出枠を購入しており、商品を購入する消費者の立場では、例えばどのシャツやトレーナーが環境に優しいのか把握することができない。
非営利組織と提携
ベン&ジェリーの新たなプロジェクトは、スイスの非営利組織ポセイドン・ファンデーションとの協力によって実現した。コンサルタントとして17年間にわたり、米JPモルガンやスイスの金融大手UBSなどの取引プラットフォームの開発を支援してきたポセイドンの創設者Laszlo Giriczは、欧州だけでも49億ユーロ(約6200億円)規模になるこの世界最大の市場の一つは、適切に機能していないと指摘する。
「炭素市場には高い参入障壁がある。大半の人たちにとって、アクセス不能だ。さらに、現時点では適切に運営されてもいない。私たちはその市場をより身近で、透明性の高いものにしていきたいと考えている」
ポセイドンのソリューションは、非常にエネルギー効率の高いことでも知られるステラブロックチェーンのネットワークを使用する。ステラはアイスクリーム1スクープ(の金額のごく一部)に相当するマイクロペイメントにも対応が可能だ。
ポセイドンはまた、消費者がベン&ジェリーやその他の店舗で購入した商品のカーボン・オフセット(それを生産した企業が排出した温暖化ガスがどのように相殺されたか)を把握するのに役立つアプリの開発にも取り組んでいる。
Giriczによれば、人々の社会や環境への影響に対する関心は、ますます高まっている。そして、この問題により関与している企業が選ばれるようになっている。
ブロックチェーンを使った環境分野の革命を思い描いているのは、ポセイドンだけではない。IBMは先ごろ、ブロックチェーンを使った企業のカーボン・フットプリント(事業において排出した温暖化ガス)の相殺を可能にするため、環境フィンテックのスタートアップ、ヴェリディアム・ラボと提携したことを発表している。