ビジネス

2018.05.20

激化の生鮮食品「宅配戦争」、米クローガーが英企業と提携

Jonathan Weiss / Shutterstock.com

米国では食品スーパー大手の「ホールフーズ」が137億ドル(1兆4300億円)でアマゾンに買収されて以降、「ウォルマート」が宅配事業を強化するなど、新たな小売ビジネスの模索が続いている。

ウォルマートに次いで米食品チェーン2位の「クローガー(Kroger)」はこの流れを見据え、3つの巨大な物流センターを立ち上げ、ロボットがオンラインの注文処理にあたる計画をアナウンスした。

クローガーは今後、この巨大物流センターを全米20カ所に拡大する意向だが、彼らがアマゾン以上のサービスを実現できるかは疑問だ。クローガーはこの計画の実現に向け、流通インフラを抜本的に刷新する必要がある。

クローガーが物流センターの刷新に向けて手を組んだのは、英国のオンライン食品販売の「Ocado(オカド)」だ。同社は2000年に生鮮食品のオンライン販売を開始し、2016年の売上は14億ドルに達している。

Ocadoの倉庫では、ロボットが5分以内に注文を処理し、英国の特定の地域では注文から12時間以内の生鮮食品の配達を行っている。しかし、多くの地域では1日から2日後に配達されているのが実態だ。

Ocadoは英国全土に約15カ所の専用の大型駐車場を構え、そこに大型トラックで貨物が運び込み、小型のバンに小分けして、消費者の元に宅配を行っている。Ocadoの仕組みは一見、合理的ではあるが、それでも人口約6500万人の英国で彼らは当日配送を実現できていない。

対するアマゾンやウォルマートは、米国で数時間以内の宅配を実現している。アマゾンの場合はホールフーズを宅配の拠点として用い、消費者に近い場所からダイレクトに配達を行っている。

「ここにはアメリカとイギリスの文化的ギャップがある。英国の消費者はアメリカ人よりも忍耐強いのだ」とOcadoの競合企業の「CommonSense Robotics」のマーケティング担当、Ran Peledは話す。「クローガーのやり方は、アメリカ人のメンタリティには合致しないのではないか」と彼は述べた。

デリバリー企業「Dropoff」の2018年3月のデータでは、米国人にとって生鮮食品は最も当日配達の要望が高いカテゴリだという。アマゾンのジェフ・ベゾスはこれまで、どの企業よりも迅速に商品を届けることを主眼に置いて事業を拡大してきた。

Ocadoと手を組んだクローガーは、一体どれほどの速さで生鮮食品の配達を実現することになるのだろうか。この分野での勝敗を決めるのが、スピードであることは明らかだ。

編集=上田裕資

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