アーティストや音楽レーベルは、ユーチューブのロイヤリティ額がスポティファイやアップルミュージックと比べて不当に低いと不満を述べてきた。
そんな中、2016年にユーチューブのグローバル責任者に就任したのがリオ・コーエン(Lyor Cohen)だ。Run-D.M.Cのロードマネージャーとしてキャリアを始動した後、「デフ・ジャム」を成功に導き、ワーナーミュージックの会長兼CEOを務めた彼の力を借りて、グーグルは音楽業界との関係改善に努めてきた。
そのユーチューブは5月16日、新たな音楽ストリーミングサービス「YouTube Music」をアナウンスし、スポティファイやアップルミュージックに対抗する姿勢を見せた。その発表を控えたコーエンにフォーブスは話を聞いた。
「音楽業界ではこのところ、楽曲の流通チャネルが特定の企業に集中し過ぎてしまう懸念が生じていた。私に与えられた使命は世界最大の音楽プラットフォームであるユーチューブを、音楽業界の新たな収益源として育てることだ」
コーエンによるとYouTube Musicの支払い料率は、スポティファイと同等になるという。これにより音楽レーベルやクリエイターたちは、スポティファイに次ぐ新たな収益機会を得られることになりそうだ。
サービスの始動にあたりユーチューブは大規模なプロモーションを行なうという。それにより、ユーザーらをYouTube Music(広告つきで無料)や「YouTube Premium」(月額9.99ドルで広告無し。ダウンロードも可能)に呼び込み、既存の「YouTube Red」に置き換わるサービスにする。
ユーチューブのプロダクト部長のT. Jay Fowlerはこう述べる。「これは音楽業界にとっても、音楽リスナーにとっても大きな可能性を開くことになる。これまで音楽を発見する場として機能していたユーチューブが、新たな音楽体験の場に変わっていく」
YouTube Musicはユーザーのロケーション履歴を把握し、ジムに向かう際には気持ちが高ぶる楽曲を再生し、帰宅の途上ではリラックスできる楽曲を再生するような機能も実現する。さらに、これまでのユーチューブの再生履歴から楽曲の好みを判別し、それに応じたリコメンドも行えるようになる。
「これはとてもエキサイティングなことになる」とコーエンは話す。「音楽レーベルにとっても、リスナーにとってもこれまでになかった音楽体験が可能になる」
音楽業界関係者にとっては、このサービスがどれほどの収益をもたらすのかも、非常に気になるところだ。
YouTube Musicは5月22日に始動する予定。サービス開始時の対象地域はアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、韓国になる。日本での提供が行われるかどうかはアナウンスされていない。