しかし、そのような位置付けは過去の話になりつつある。問題は、アーティストの大半がその変化に気づいていないことだ。今やアルバムは時代遅れであるばかりか、アーティストのキャリアを妨げかねない代物である。
現代はシングルの時代である。40、50分間もじっくり腰を落ち着け、アルバムに収録された曲を順番に聴く人はもういない。スポティファイやアップルミュージックを通していつでもどこでも音楽にアクセスできる中、好きでもない曲を固定のプレイヤーで聴く必要はない。それでも、アーティストたちは何ヶ月もかけてアルバムを作り続けている。アーティスト自身とレーベルの双方が経済的な損失を被ることは明らかであるにもかかわらず。
ニールセンの調査によると、昨年売れたアルバム枚数は、前年比17.7%減の1億6915万枚だった。これはCD、配信、レコード、カセットの売上を合計した数字だ。全米レコード協会の調べでは、1999年はなんとCDだけで93億9900万枚の売上があったというから激減だ。
トップセールスを誇る人気アーティストも、アルバムはそれほど売れていない。昨年最も売れたアルバムはテイラー・スウィフトの「レピュテーション」で、190万枚だった。アルバム購入者にライブチケットの優先権を与える売り方で物議を醸した作品だ。他に100万枚を超えたアルバムは、エド・シーランの「÷(ディバイド)」の1枚のみで、110万枚。昔のヒットアーティストが1週間で達成していた数字である。
「iTunes LP」もサービス終了
この音楽消費の変化にいち早く対応してきたのは、ヒップホップのアーティストたちだ。彼らは一定数の楽曲が完成してからアルバムを出すのではなく、頻繁にシングルをリリースし続けてきた。何年もかけてアルバムを制作し、完成後にその中の1曲か2曲が話題に上がるのを待つよりも、常にヒットチャートに新しい曲を送りこむ方がいいというのが彼らの考えだ。