しかし、アップルが中国でシェア拡大を図る上で、Siriが救世主になるかもしれない。アップルの広報担当者によると、中国ではSiriに対応した人気アプリが増加傾向にあり、iPhoneの利便性の高さがユーザーから再評価されているというのだ。
アリババの決済アプリ「アリペイ(Alipay)」は、Siriに対応し音声コマンドで送金が出来るようになる。また、配車アプリ「滴滴出行」やメッセージアプリ「WeChat」などもSiriに対応している。
調査会社「Canalys」のアナリストであるMo Jiaによると、アップルは開発者用キット「SiriKit」を提供してサードパーティ製アプリとSiriとの連携強化を図っているという。
「ユーザーはSiriを多用するため、Siri対応のiOSアプリが増えればユーザーエクスペリエンスが高まる。今後はSiri対応アプリがますます増え、Siriの機能性も向上するだろう」とJiaは話す。
アップルは、2016年のWWDC(Worldwide Developers Conference、世界開発者会議)においてSiri連携アプリをビデオ通話やメッセージング、決済、外部の配車サービスなどに対応させると発表している。
調査会社「Counterpoint」のデータによると、中国におけるアップルのシェアは昨年Q1時点で10%だったが、年末には15%に上昇して3位となった。しかし、Canalysのデータによると今年のQ1はシェアが0.7ポイント減少し、1位のファーウェイを含む4社がアップルを上回っている。
中国人消費者の多くは、iPhoneは高機能だが価格が高過ぎると感じている。さらにアップルにとって逆風となっているのが、スマホ出荷量の減少だ。調査会社「IDC」のデータによると、2017年の中国での出荷台数は前年比5%減だった。
さらに、別の調査会社「Canalys」のデータによると、今年の第1四半期の中国でスマホ出荷台数はさらに落ち込み、前年同期比21%の減少とされている。
中国にR&D拠点設置、現地ニーズを探る
「アップルの中国市場での展望は、どれだけ消費者を興奮させることができるかにかかっている。市場全体が縮小し、競争環境が厳しい中で市場シェアを拡大するのは長期的な課題だ」とIDCのリサーチマネジャーであるMichael Yeoは話す。
アップルは中国にR&Dセンターを開設して現地向けサービスの改善に取り組んでいる。Siriと中国製iOSアプリとの連携強化もこうした動きに連動しており、アップルが新たなトレンドを生み出すよりも現地に根付こうとしていることがうかがえる。
Yeoによると、アップルペイ(ApplePay)は中国でシェアが低いため、アップルは競合のアリペイにSiriを対応させることを厭わなかったという。
「アップルは、中国で成功するには市場の現実を理解し、現地ニーズに対応していく必要があることに気がついた。Siriをアリペイに対応させたのは、中国市場に適応しようとしている良い例だ」とYeoは話した。