言い換えれば、人間が丁寧に準備した対象に限ってのみ、“生真面目”にピッキングすることができたということになる。
しかし昨今では、さまざまな形状のモノが煩雑に混ざって置かれている状態であっても、任意の対象だけを上手く取り出せるというような新たな技術が続々と報告され始めている。ロボットが人工知能の力で知能化し、人間のようにモノの種類や特徴を瞬時に判断・分類することができるようになってきたというわけだ。
具体的な研究例をひとつあげてみよう。韓国電子部品研究院(KETI)では、ピッキングロボットの認識・分別能力をディープラーニングで強化する研究を行っている。
ここ1年間では、動作学習を約30万回、またシミュレーターを使った学習を約270万回にわたり実施。その結果、現段階では学習済みのモノ12種類と未学習のモノ10種類をひとつの箱の中に混ぜて入れた状況での認識率が96.5%、ピッキング成功率が82.6%にまで高まっているという。
なおKETIは、2D・3Dカメラで物体との距離を認識させる環境学習に始まり、モノが入ったボックスや入れ物を認識させる学習、ピッキングさせるモノとそうでないモノを区別させる学習などを順次行ったとしている。また、仮に任意の対象をピッキングすることが難しいと判断した場合、邪魔なモノをどけたり、押しのけたりすること、さらに目的物が見つからない場合は、箱を漁って見つかるまで探させるようにも学習させたという。
ピッキングロボットがスマート化していけば、その活躍の領域は従来のような工場や物流現場のみにとどまらないだろう。厳密に運用するための人的、スペース的、時間的な管理コストを削減できるため、中小規模の工場や企業でも気軽に導入できるようになるからだ。
もしかしたら、主婦(夫)の料理や、父親の日曜大工を手伝うなど、コンシューマー用「家事アシスタント・ロボット」として愛用される日だって来るかもしれない。もちろんそのためには、認識率、ピッキング率ともにほぼ100%は絶対条件となる。今後、世界各国の研究者・開発者から報告される新たな研究結果に期待したい。