AIは「ドーピング検査」をどう変えるのか?

Igor Zvencom / Shutterstock.com

大リーグでの大谷翔平選手の大活躍、サッカー日本代表監督・ハリルホジッチ氏の電撃解任など、今月は日本のスポーツ界を揺るがすニュースが尽きない。そんななか、スポーツ競技の公平性を保つためのテクノロジーとして、人工知能(AI)への注目が高まっているという報せが聞こえてきた。

ロシア代表チームの「ドーピング問題」に揺れた平昌冬季五輪の閉幕から間もなく、3月21から23日にかけて、世界アンチ・ドーピング機関(WADA)の第14回シンポジウムが開催された。会合の舞台となったのはスイス・ローザンヌ。900人の関係者が集まったその席上では、人工知能を活用した“スマート”なドーピング検査の必要性が語られそうだ。

海外各メディアの報道によれば、世界アンチ・ドーピング機関は昨今、人工知能を活用して選手たちの検査を行うことに関心を寄せているという。というのも、収集された膨大な量のデータをAIで分析すれば、より正確かつ効率的なドーピング検査が実現できるからだ。

3月28日には、フィンランドスポーツインテグリティセンター(FINCIS)が主催する別の会合が、首都・ヘルシンキで開催された。参加したのは、国際反ドーピング防止委員会(NADO)、国際競技連盟(IF)、インターポール、WADAの情報捜査部門(I&I)の代表など、世界各地で活動する26人の捜査官&分析官たちだ。

会合では「情報捜査の技術革新」と「ドーピング防止情報捜査ネットワーク(ADIIN)」の運営計画の草案などが議論された。後者のADIINは、「経験、専門知識、国際的なベストプラクティス、また運用データを安全に共有できるネットワーク」だと定義されている。つまり、ドーピングを撲滅しようという各国関係者たちによって、データや情報を共有するネットワークを構築していくという目標が掲げられたことになる。ADIINの草案は、5月に開催されるWADAの執行委員会および理事会に報告される手筈となっている。

これらのニュースを踏まえ、韓国・国際スポーツ戦略委員会の事務局長、パク・チュフィ氏は、「現在のWADAの課題は、収集した膨大な選手データを時間内に分析できていない点」だと、国内メディアへの寄稿文で指摘している。「人工知能がドーピング判定までは行えないまでも、関連システムやアルゴリズムを開発することで、それらデータを活用して、ドーピングが疑われる選手を中心により効率的な検査を進めることができる」というのが彼女の主張だ。

ちなみに、検査や捜査の非効率性が予算を圧迫しているのも、WADAの悩みの種だそうだ。

今回のロシアのドーピングスキャンダルに関する大規模調査などをはじめ、ここ12年間で、本来、研究に充てられるべきだった予算が80%も減少してしまったという。これは、単純に予算を集めるための“ポジショントーク”に過ぎないかもしれないが、捜査・検査の非効率性が全体予算の一部を食いつぶしているという状況が少なからず存在するのだろう。それらも、人工知能によるドーピング検査の合理化に期待がかかっている理由だと予想できる。

東京五輪を控えた日本にとっても、ドーピングを撲滅し“聖なるスポーツの祭典”を成功させることには大きな意義がある。すでに動き出している関連企業はあるのだろうか。いずれにせよ、「ドーピングを発見するAI」は、課題解決=ビジネスにも直結しているように思える。

ロボティア代表が綴るAI/ロボットの最前線
過去記事はこちら>>

文=河鐘基

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事