トランプ大統領とコミー前FBI長官との確執は、現政権が始まってからのことだから、比較的新しい話題なのだが、政権内部で実際に働いた行政の長が、具体的にトランプ大統領を内部情報の暴露とともに攻撃する書だから、社会に与えるインパクトも極めて大きい。
トランプ大統領が部下を次から次へクビにすることはよく知られた話だが、3月現在、彼に直接仕える65人のホワイトハウス幹部のうち、辞任を含むと49%が職を解かれている(ブルッキングス研究所調べ)。これはオバマ大統領の1年目の3倍以上の数字で、あらためてアメリカ国民を驚かせている。
とくに、RUP(Resignation Under Pressure=威圧による辞任)という新語が、ホワイトハウスで飛び交っているというのは、この事態の深刻さを物語っており、広報部長職など前任者をクビにしたあと大統領が後任を指名しないままのポジションがいくつもあり、政権ないでも混迷が続いている。
その多くの解雇者のなかでも、コミー氏との確執は当初から派手な劇場型であり、この本については、企画発表の段階から前評判が高かった。304ページにも及ぶこの本の原稿を、「ニューヨークタイムズ」がいち早く入手し、報道したが、期待通りの「恨み節」が書きつらねてあった。
トランプ大統領が就任早々、彼がかつてモスクワのホテルのスイートルームで複数の売春婦と同衾に及んだというスキャンダル報道について、コミー氏を呼んで「ノックダウンせよ(撃ち落とせ)」と命令したというエピソードについては、大統領の性格を嘘つきで短絡的で自己中心的だと指摘している。
また、コミー氏はトランプ政権では忠誠心がすべてにおいて優先すると分析し、「その様子はまるで自分がかつてニューヨークのマフィアを検挙したときのことを思い出させ、すべては大小の嘘にまみれ、発言は封じられ、ボスがすべてを制圧していて忠誠心はモラルや真実を超えた、組織の絶対の掟となっている」とまで記している。
トランプ大統領も早速ツイッターで反論
コミー氏は、ブッシュ大統領の時代にホワイトハウスに司法副長官として入り、オバマ大統領の時にFBI長官になっているので、3人の大統領を比べたうえで、「トランプがいちばん最低」と、とにかく書きたい放題だ。