タカタは先ごろ、米ミシガン州に拠点を置く中国の自動車部品サプライヤー、キー・セイフティ・システムズ(KSS)への事業譲渡が完了。高田重久会長兼社長が退任したと発表した。タカタは昨年、この問題ですでに経営破たんしており、日本で民事再生手続き中だ。リコールにかかる費用の大半は、自動車メーカー各社が肩代わりしている。
KSSは小規模ながら、シートベルトその他の安全部品で高い信頼を得ているサプライヤーだ。リコール実施の原因となったエアバッグのインフレーター(ガス発生装置)を除き、タカタの事業と資産の大部分を約16億ドル(約1710億円)で引き継いだ。
また、これに合わせて社名を「ジョイソン・セイフティ・システムズ」に変更している。一方、タカタは欠陥のあるインフレーターの交換が完了するまで、リコールへの対応にあたる。
難しい問題
ホンダやトヨタ、フォードなど多数の自動車メーカーに採用され、問題が指摘されているタカタ製エアバッグのインフレーターは、5000万個を超える。これらのインフレーターは作動時に設計値を上回る圧力がかかり、破裂して金属片が飛散。乗員が死傷する事故につながっている。これまでに22人の死亡と、確認されているだけで180人以上の負傷との関連が報告されている。
自動車メーカー各社は、欠陥のあるエアバッグの交換を進めているが、完了するのは来年、またはそれ以降にずれ込む可能性もあると見込まれている。複数回にわたって通知を受け取っているはずの各メーカーの顧客が全員、実際にディーラーに車を持ち込み、交換を依頼してくれなければ完了は不可能だ。
メーカー各社は交換が進まない理由として、新しいインフレーターの供給が限られていること、修理の予定について顧客との調整が必要なこと、無料の交換について大量の通知を郵送しても、連絡が取れない顧客がいることを挙げている。
差し迫った危険
タカタ製エアバッグのインフレーターは、何が問題だったのだろうか?自動車を所有する消費者の多くは、ステアリングやダッシュボードの中に格納されているエアバッグを急速に膨張させる仕組みを知らない。タカタはエアバッグを膨らませるために、「爆発」を起こす硝酸アンモニウムを使用していたのだ。
揮発性のある硝酸アンモニウムは経年劣化し、爆発する危険性が高まる。特に高温にさらされると劣化が進むが、夏季や直射日光が当たった場合には、車内は高温になるものだ。
数百万人に上る米国の消費者がエアバッグの交換を待つ、あるいはメーカーからの通知を無視し続ける中で、死傷者の増加は続いている。昨年12月にはテキサス州で、走行中の車に乗っていた17歳の女性が出血多量で死亡した。エアバッグが爆発し、飛散した金属片が首に刺さったことが原因だ。
米国内であれば、www.safercar.govのサイトで自分の車の識別番号を入力することで、所有する車がリコールの対象かどうかを確認することができる。エアバッグの交換の必要がある車のメーカーは、以下のとおりだ。
ホンダ、アキュラ、アウディ、BMW、キャデラック、シボレー、クライスラー、ダイムラー、ダッジ、フェラーリ、フィスカー、フォード、GMC、インフィニティ、ジャガー、ジープ、ランドローバー、レクサス、リンカーン、マツダ、メルセデス、マーキュリー、三菱自動車、日産、ポンティアック 、サーブ、サターン、サイオン、スバル、テスラ、トヨタ、フォルクスワーゲン