EU圏内で「コンテンツの移動」が自由化、デジタル市場統合で

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4月1日からヨーロッパに住む人々は、ネットフリックスやスポティファイなどのストリーミングサービスを今までより便利に使えるようになる。EU圏内であれば、好きな国に購入したコンテンツを持ち運ぶことが可能になる。

ネットフリックスのヨーロッパのユーザーが視聴可能なタイトル数は、米国に比べるとやや少ないのが実情だ。これは、国ごとに複雑な権利処理が必要なために生じている問題だ。

ノルウェイの利用者がイタリアに旅行した際に購入したコンテンツを再生しようとしても、現状では「利用できません」と表示される場合がある。そのため、EU圏内のユーザーの間ではVPNサービスの利用が広がっているが、ネットフリックスはこれを阻止する対策も講じている。

しかし、昨年5月にEU域内の基盤統合を進める「デジタル・シングル・マーケット(DSM)」で著作権管理を一括化する合意が交わされ、その状況が大きく変わろうとしている。

「今回の合意はEU圏内の人々にとって大きな利益となる。お気に入りのドラマや音楽、スポーツ番組などを、旅行先の国でも楽しめるようになる。これは域内の国境のバリアを取り払う上で、大きなステップだ」とDSMのバイスプレジデントを務めるAndrus Ansipは述べた。

ネットフリックスやHBOなどの有料のコンテンツサービスを展開する企業は、この新ルールに従うことが求められる。スポーツファンに大人気の「Sky Go」もその対象となる。

しかし、イギリス国民は今回の動きで苦い思いを味わうことになる。英国民がDSMの恩恵を享受できるのは1年間に限られる。イギリスのテリーザ・メイ首相は、英国がDSMから離脱することを明言しているのだ。

欧州委員会は次のように述べている。「EU離脱の日以降、イギリス国民はEU諸国に旅行する際に、自国で購入したコンテンツを利用できなくなる」

一方で英国のテレビネットワークは、EU諸国のコンテンツを放送する際の権利処理を1年以内に完了することを求められている。また、EUの放送局も英国のコンテンツの権利処理を実行せねばならない。

これはブレグジット(英国のEU離脱)に伴う痛みの一例だ。しかし、こういった事例は今後もさらに増えてくる。

編集=上田裕資

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