第0回として、城口に30Under30に選出されるまでの起業家としての経緯、そして日本と異なるヨーロッパの起業環境について語ってもらった。
現在、家庭向け電力・ガス切り替えサービスであるエネチェンジ社と、電力データ解析サービスSMAP ENERGY社の2つの会社の代表取締役会長を兼任しています。
昨年、「Forbes 30 Under 30 Europe」に選んでいただいたのは、ヨーロッパと日本を拠点に従業員100人以上の規模でエネルギー企業を経営し、上場を狙える位置にいること、そして英ケンブリッジ大学から出資を受け、さらにEUが出資しているベンチャープログラム「Climate-KIC」からも出資を受けており、ヨーロッパから見ても分かりやすい基準を満たしていたからではないかと思っています。
この連載企画では、30 Under 30に選ばれた同世代の起業家やリーダーたちとの対談を通して、日本とヨーロッパ、世界での起業文化、ビジネス文化の違いや、彼らが今考えていることを伝えていきたいと思っています。その前にまず、自己紹介から始めたいと思います。
(東京大学の学生だった)2011年3月、東日本大震災が起こり、非常に心を痛めました。被災地には毎週のように赴きましたが、実際には瓦礫撤去程度しか役に立てず、歯がゆさを感じました。また原発事故のような問題に関しても、もっと取り組みたいと思いました。それがきっかけでエネルギー問題に興味を持ち、その分野で、少なくとも日本人では誰にも負けない専門性を身に付けるために、12年に英ケンブリッジ大学のエネルギー工学修士・博士課程に進学することを決めました。
米国ではなく英国を選んだのは、日本がエネルギー制度において英国を参考した歴史的経緯もあり、制度に共通点があるからです。ヨーロッパのエネルギー分野に関して事情通になることが、日本のエネルギー改革を推し進める上で非常に重要になってくると考えました。
ケンブリッジ大学ではエネルギーの効率化、省電力化を研究する研究室に籍を置いていましたが、機械学習の世界的権威の一人である、ズービン・ガーラマニ教授の研究室の隣でした。14年にグーグルに買収されたことで有名になった「ディープマインド」を輩出した研究室です。エネルギーの効率化には機械学習の技術も重要になるため、私も1年目は教授の授業を取っていました。ディープマインドの創業者、デミス・ハサビスとも同じレクチャーを受けており、幸運にも、彼らの存在が身近でした。
私とハサビスの共通点は、最初から起業を目的にケンブリッジの博士課程に籍を置いていた、ということです。お互いに、この3~4年の間にいい起業仲間を探して、絶対に会社を作ってやろう、と思っていました。
これは余談ですが、キャンパス内で他の学生のアテンションを集めるために、2人とも戦略的に目立つポルシェに乗っていました。学生でポルシェに乗っていたのは、私と彼の2人だけだったと思います。今も多くの友人がディープマインドのアルファ碁に関わっています。“AI(人工知能)のメッカ”のような場所に、唯一の日本人として関われたのはよかったと思っています。