瞑想ではない。翌日にすべきことをリストにして書き出すのだ。To-Doリストを書くことで、脳は覚えておかなければいけない事柄を“放り出す”ことができ、それによって効率的に眠りにつくことができるという。
意識から心配事の“荷を降ろす”
米国ベイラー大学の研究者たちは18〜30歳の健康な若者を2つのグループに分け、ひとつのグループには翌日、あるいは近日中にしなければいけないことを書き出させた。もうひとつのグループは、過去数日間に行ったことを書き出した。それから被験者たちは研究室のなかで眠り、睡眠ポリグラフ検査によって、脳波、血中酸素レベル、心拍数、呼吸、目と足の動きが調べられた。
その結果、To-Doリストを書き出した人々は、そうでないグループに比べて9分間速早く眠りについたことがわかった。また書き出したリストの内容がより具体的であればあるほど、眠りにつくのが早かった。9分は決して大きな差ではない。だが論文の著者たちは、To-Doリストを書くことには瞑想と似たような効果があると語っている。
To-Doリストを書き出すことは、近い将来の不安に対して効果があるのだろう。『Experimental Psychology』誌に論文を掲載した著者たちは、To-Doリストが不安に対して与える影響として2つの仮説があると指摘している。
ひとつは、不安を大きくするものだ。翌日にしなければいけないすべてのことを思い出すことはストレスフルな状態、少なくとも覚醒状態を引き起こしてしまうからだ。もうひとつの仮説は逆の効果である。著者たちは次のように書いている。
「To-Doリストを書くことで人は、意識から心配事の“荷を降ろす”のだろう。そのため、すでに終えた活動(終えているので“荷を降ろす”必要がない)について書き出す場合に比べて、眠りにつくまでの時間が短くなるのである」
言い換えれば、翌日にしなければいけないことを頭から捨て去ることで、精神は心配事から解放され、落ち着くというわけだ。
「私たちは、休みのない社会を生きています。私たちのTo-Doリストは常に増えていき、私たちは就寝時間になっても終わることのないタスクを気にしなければいけません」と、筆頭著者のマイケル・K・スカリンは声明のなかで語っている。「ほとんどの人は、頭のなかでTo-Doリストのことを繰り返し考えてしまうのです」。それらを書き出すことでワーキングメモリーを空にし、脳をリラックスさせることができるのだろう。
より具体的に書くほど効果的
書くことは、鬱や深い悲しみといったより重大な精神疾患に対して治療の効果があるとする研究もある。新しい研究がこれと同様のメカニズムによるものかはわからないが、考える必要のない心のなかの物事を紙に書き出すという点では似ているといえる。
今回の研究の大きな難点は、研究室の中で行われたことである。睡眠をトラッキングするにはいいが、リアルな日常の行動をとらえるという点では向いていない。参加者たちは寝る前にメールを見たり読書をしたりすることなく、ただベッドに入っただけだった。つまり、To-Doリストを書いたすぐあとにiPadを触っていたら効果があったかどうかはわからない。リストを書くのは、ベッドに入る直前に行う必要があるのかもしれない。
これは、なぜ効果があるかは正確にはわからないが、効果があることはわかっている現象のひとつである。だから、よく眠れないと感じるときは、翌日にすべきことをすべて書き出してみよう。書く内容がより具体的なほど、効果があるはずだ。