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(Photo by Chesnot/Getty Images)

スポティファイは、4月3日に直接上場(ダイレクト・リスティング)により米ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場する。同社が新株を発行せずに、既存の株式を上場させる直接上場を選んだ理由の一つとして、引受け証券会社を選ぶ必要がないため、多額の手数料を節約できるメリットが考えられる。

今回のケースでさらに注目すべきポイントは、ロックアップ期間(公開前の大株主が、上場後に保有株の売却を制限される期間)が設定されないことだろう。公開前の株主が直ちにキャッシュアウトすれば、それは彼らがスポティファイの将来性を不安視していることを意味する。

今回の直接上場は、次のように例えることができる。あなたは、マリブの海岸に面した一等地にある家を保有しており、この物件を売却したいと考えている。この時、あなたは「自分がこの家の価値を一番理解しているので、仲介業者に高い手数料を払わなくても簡単に買い手を見つけることができる」と考える。しかし、買い手としては、不動産業者が仲介した方が市況に合った適正価格となり、所有者が把握していない瑕疵を見つけてくれるかもしれないので安心だと感じるものだ。

通常のIPOでは主幹事証券会社が公開価格を決定し、公開初日に多くの売買が行われるように引受けた株式を機関投資家に販売する。直接公開の場合は、こうしたメリットは得られない代わりに、5%程度の報酬を証券会社に支払う必要がない。スポティファイの場合、手数料は莫大な金額になる。

また、通常のIPOでは一般的に90-180日のロックアップ期間が設定されるが、直接上場ではこれがない。IPOでもロックアップ期間は強制ではないが、公開前の株主が株式を大量に売却して株価が大幅に下がることを防ぐため、通常は主幹事証券会社が設定を主張する。

昨年は損失5億ドルの赤字体質

内部事情に通じた株主が公開直後に株式を売却すれば新規投資家にとってネガティブなサインとなるため、投資家の信頼を得ることもロックアップ期間を設定する目的の一つだ。

スポティファイがロックアップ期間のない直接上場を選んだということは、事業の長期的な成長性を疑問視しているか、他社への売却に成功する可能性が低いと感じている株主が多い可能性を示唆している。将来性に自信があるのであれば、迷わずに通常のIPOを選択し、ロックアップ期間を定めていたのではないかと筆者は思う。

また、仮に直接上場であっても、株主が売却できる株式の上限を定めるといった措置を講じていただろう。スポティファイは昨年5億ドル近い損失を出しており、IPOを選択した場合もどれほどの資金を調達できていたかは未知数だ。

4月3日が近づくにつれ、スポティファイや音楽ストリーミング業界の将来性を高く評価するコメントが多く聞かれるだろう。しかし、実際の評価は、新規の投資家がスポティファイの株を購入できるようになってから明らかになるはずだ。

編集=上田裕資

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