メトロポリタン警察が想定している計画の全体像は、グーグルやマイクロソフト、アマゾンなど大手ITプラットフォーム事業者からデータを収集、それをオンラインストレージに保存し、分析や捜査に用いるというもの。児童虐待の画像をAIで検出する試みは、今後2〜3年以内に実用化される見込みだ。
英国の裁判所も、警察が犯罪に関する画像を強制的に保存できるように法的権利を付与しようとしており、クラウドサービスを提供する企業と警察の間で契約を結ぶ作業も進められている。
なお英国では、児童虐待の容疑者が摘発された際、その量刑を決めるため、証拠となる写真や児童ポルノなどの検証を目視で行ってきた。人間の警察官が、一枚一枚、証拠となる写真を確認しながら、各事件の深刻さや凶悪さのほどを判断してきた形だ。
ただ、そのような捜査の方法は、警察官自身のトラウマになるケースが少なくなかったという。AIを導入する理由のひとつに、それら警察官のストレスや精神的負担を軽減するという目的もある。
一方、韓国では、今年3月に入って、保健福祉部など政府省庁が中心となり、ビッグデータを活用した「児童保護システム」を正式に実用化した。社会保障サービスの効率的な提供、また児童虐待の早期発見や死亡・重傷事故を防ぐのが目的だ。
同システムでは、学校の長期欠席データ、予防接種実施記録、病院記録など、政府や自治体に蓄積された各種データが利用される。それら子供の環境を推測できるビッグデータを解析して、児童虐待が疑われる一定レベルの要件が満たされた場合、自治体担当者に通知が行く仕組みとなっている。
2017年9月から今年2月までは実証実験が行われ、1万3000人余りの潜在的な“危機児童”と、児童虐待の兆候が6ケース発見された。現在その結果を受け、児童保護専門機関などによって調査が進められている最中だという。
児童虐待は表面化しにくく、日本でも年々深刻になっている社会的課題のひとつとされている。人間に新しい気づきを与えてくれるという長所を持ったAIは、不安な毎日を過ごす子供たちの信号をもキャッチできるか。その技術の進歩に注目したい。