岩佐:企業が従業員の生活まで守るか、逆に自由にするかを選ぶということですね。では、逆に企業にとって地域貢献に力を入れることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
柳澤:これも2種類あると思っていて。一つは新規事業のタネ。カヤックでは市場規模をみてじっくり計画を立てるのではなく、とりあえずチャレンジしてPDCAを回してダメだったら素早く手を引くというやり方で新規事業を始めることが多いです。地域貢献もその一つとして、成功しそうな事業は続けてそうでない事業は閉じるという事業ごとにフラットな目線で評価することもできるでしょう。
一方で、地域事業に力を入れた時点で、すでに社員に住居を斡旋できるなどのメリットが生まれています。一定以上の規模で売上とは違う利益を得ることができれば、続ける価値はありますよね。
岩佐:短期的な利益だけでなく、従業員のモチベーションなども含めた長期的な利益で判断したいということですね。
柳澤:そうですね。とはいえ、まだそこまで具体的な段階ではなく、まずは土壌を作るのが大切だと思っています。お金に代わる幸福の指標を見つけるためには、企業や地域がどんどん協力しなければなりません。地域の人も利用できる「まちの社員食堂」「まちの保育園 鎌倉」にいろんな人が集まってくれれば、それだけ思いがけないコラボや取り組みが生まれやすくなりますよね。
「数字を追いかけること」が得意な企業が地域にコミットすることで、新たな幸福の指標を見つけられる。第3回では、カヤックという組織を超えた柳澤個人の思いが語られる。あえて「経営者」という立場で柳澤が「面白さ」を目指す理由とは──。
岩佐文夫の『次なる資本主義をたずねて』
過去記事はこちら>>