だが、実際のところ立っていることは、座っていることと比べてどの程度、健康に良いのだろうか。この点について議論する際に頻繁に話題にされるのが、消費カロリーの違いだ。「立っていると、座っているときの2倍のカロリーを消費する」と聞き、本当なのかと疑問に思ったことがある人もいるだろう。
それが事実かどうか、簡単に答えを出すことはできない。カロリーの消費量には、さまざまな要因が影響するためだ。信頼に足る結論を導き出すのに十分なだけの要因について検証できる研究の実施は、非常に難しい。
そこで、「疑問」に答えを出すために有用となるのが、複数の研究結果を集めて分析するメタ分析だ。今年1月、欧州予防心臓病学ジャーナルに掲載されたメタ分析の結果は、座っていることと立っていることの体への影響の違いを調べた過去の658件の研究結果を見直し、そのうち46件の結果について詳しく分析したものだ。
調査対象となった人数は、約1200人。対象とした過去の研究は、「疑問」に対する答えに影響を及ぼし得る一連の要因(年齢、性別、体重、全体的な健康度など)について調べたものだ。
重要なのは「違いがある」こと
メタ分析の結果、座っているときと立っているときに消費するカロリーの差は、1分当たり平均0.15 kcalであることが分かった。性別で見ると、女性は同0.1kcal、男性は同0.19kcalの差だった。分析対象とした研究のうち、ランダム化試験を行ったものの結果にはより大きな違いが見られ、1分当たりの消費カロリーの差は平均0.12〜0.28kcalだった。
メタ分析からは、立っているか座っているかによって消費カロリーに2倍の差が出るとの結果は得られなかった。だが、それでも「違いがある」ということに大きな意味がある。分析結果によれば、「体重65kgの人が1日のうち6時間を座らずに立って過ごせば、54kcal余計に消費することになる。エネルギー摂取量に変化がなければ、1年間で約2.5kgに相当する体脂肪を落とせる計算になる」という。
また、視点を変えてこの結果を見ると、1日のうち座って過ごしていた6時間を立って過ごすことで、「M&Mチョコレート約13粒分のカロリーを燃焼できる」ことになる。
メタ分析によって確認されたのは、その他の全ての条件が変化しないと仮定した場合、毎日少なくとも6時間以上を今より余計に立って過ごすことで、1年間で平均2.26kg程度に相当する体脂肪を減らすことができるということだ──大きな違いではない。だが、間違いなく違いではある。