環境ビジネスの競争が世界規模で開始
5つのグローバルリスクのカテゴリーのなかから、まず環境と社会を概説しよう。
環境リスクは、異常気象、自然災害、気候変動、生物多様性などがグローバルリスクとして同定されている。報告書では、パリ協定後のCO2を巡る規制、それに伴うエネルギーシフトや希少な自然資本の高価格化(とくに水資源)について触れられている。
また、この動きを、国際機関や各国政府の政策に留まらせることなく、ビジネスの側面からもとらえている点が、ダボス会議らしい。太陽光発電、水素、新しい交通や都市システムなどをテーマとした新しい環境ビジネスについての競争が、既に世界規模で始まっていることも指摘している。
社会リスクは、都市計画の失敗、食糧危機、大規模な移民、水資源危機などが同定されている。とくに移民問題は紛争、災害、貧困、格差、政治など多くの要因が複雑に関係しており、人口爆発スピード、食糧需給ギャップ、気候変動による各種災害がそれを加速させていると指摘している。
「国境に壁をつくる」が、その象徴だが、自国民ファーストの政策は先進各国で多くの支持を得ている。また、SDGs2030(国連の持続可能な開発目標)の筆頭のイシューは、人権と貧困だ。日本では、お祭り騒ぎのようにSDGsを利用しているが、人権や貧困そして移民問題に対する日本社会のリスク認識とは大きな乖離がある。
「グローバルリスク報告書」は、政策意思決定者や経営者にも読んでいただきたい内容だ。私たちが現在認識している経営や事業のリスクや課題を、個別具体の問題として捉えるのではなく、包括的に捉える俯瞰力が試される読み物になっている。ぜひ目を通して、世界経済のメガトレンドを体感していただきたい。
[参照]
・図1、図2ともに http://www3.weforum.org/docs/WEF_GRR18_Report.pdf