北朝鮮が、大会参加を正式に表明したのは、1月9日に行われた南北高位級会談でのこと。以降、韓国メディアは多くの関連情報が報道しているが、個人的な印象で言うと、その取り上げ方は、各競技の選手紹介など一般的な報道を凌ぎかねない勢いだ。オリンピックはあくまでスポーツ大会である。ただ韓国の人々は、今後、北朝鮮と政治的・社会的に向き合っていくのかというターニングポイントとしても、今大会を捉えている向きがある。
では実際、韓国の人々は北朝鮮代表団の参加をどのように考えているのだろうか。その意見を知る上で参考になる資料がある。AI&ビッグデータ企業・ダウムソフトが行ったSNS分析の結果だ。
まず同社は、昨年12月1日から今年1月9日まで、北朝鮮の平昌五輪参加の可能性と関連した記事を分析。その結果を見ると、参加に肯定的な意見と否定的な内容の投稿割合が、それぞれ46%、54%となり否定的意見が上回った。
肯定的な反応の中には、北朝鮮の平昌五輪参加を「歓迎する」(言及量1916件)という意見が最も多く、次いで、オリンピック期間中、北朝鮮の脅威が「解消」(1804件)するという期待感が続いた。一方、北朝鮮のオリンピック滞在費を支援することを「懸念」(1302件)する立場や、北朝鮮の参加自体を「反対」(1297件)するという意見も少なくなかった。
これらの結果を踏まえ、ダウムソフトは「北朝鮮の平昌五輪参加は朝鮮半島の脅威を解消して、平和的なオリンピックを実現できるという点で歓迎すべきことだが、一方で北朝鮮代表団の滞在費支援の問題について国民が懸念していると思われる」と説明している。
ただ、北朝鮮の平昌五輪参加が決定した1月9日から12日の間の関連記事を分析した結果では、北朝鮮のオリンピック参加を肯定的に捉えた書き込みが64%まで増え、逆に否定的な書き込みは36%まで減った。
最も多く使用された単語は「歓迎する」(言及量3638件)であり、北朝鮮が参加するオリンピックの「成功」(862件)を祈願したり、「平和」(792件)に寄与する五輪になるだろうという期待感も多かった。
2回目の調査についてダウムソフトは、「平和な五輪という大きな枠組みのもと、北朝鮮の参加規模は小さいが、貴重で歓迎すべきことだと判断している人が多い(中略)ただし、世間の注目が北朝鮮に向かい、主催する我が国の立場と主客転倒することに不満もあった」と説明した。
韓国人の中でも、特に20代~30代の若い世代に実際に中心に話を聞いてみると、北朝鮮との関係が良好になることに対して否定的な意見を持っている人々は、日本で考えられているよりもずっと少ない。きっと、人工知能やビッグデータを用いた分析手法が発達すれば、韓国では表立っては言えないリアルな世論が見えてくるはずである。
なお、今回の分析は2017年12月1日から2018年1月9日まで、そして2018年1月9日から2018年1月12日までの2回に分け、平昌冬季五輪関連のビッグデータを対象に行われた。詳細としては、ブログ1435万件、ツイッター4億4886万件、ニュース90万件となる。