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2017.12.21 12:30

健康的な「合成アルコール」商品化へ、英教授が資金調達

Monkey Business Images / shutterstock.com

英インペリアル・カレッジ・ロンドンのデビッド・ナット神経精神薬理学教授は2009年、同国の薬物乱用諮問委員会の委員長を辞めた。きっかけは、「合成麻薬のMDMA(エクスタシー)は乗馬より安全性が高い」との見解を示したことだった。

そのナット教授の名前が再びメディアに取り上げられたのは、昨年9月のことだ。ドリンクビジネス・ドットコムが、教授が発明した合成アルコール、健康に害を及ぼす影響だけを取り除いた「アルコシンス(Alcosynth)」について伝えたのだ。

およそ100の特許取得済みの化合物を原料とするアルコシンスの商品化に向け、同教授は今年、アルカレラ(Alcarelle)を設立。700万ポンド(約10億円)の調達を目指している。オンライン・ビジネスニュースのインターナショナル・ビジネス・タイムズ(IBT)によれば、同教授ら8人の科学者たちが、ほろ酔い加減になる一方で二日酔いやその他の好ましくない影響、健康への害がない商品を開発中だ。

アルカレラのデビッド・オーレン社長によれば、アルコールはマラリアと髄膜炎、結核、デング熱による死者を合わせた数を上回る人たちの死因となっている。同社はアルコールが原因の死者を減らすこと以外にも、飲酒が引き起こす不快感や吐き気、そして暴力を減らしたい考えだ。

ナット教授はIBTに対し、「アルコシンスを通じてアルコールの消費にも、電子たばこがたばこに引き起こしたのと同様の変化をもたらしたい」と述べている。10年後、あるいは20年後、欧米各国ではほとんどの人たちがアルコシンスを飲むようになり、アルコールはほぼ「過去のもの」になると見込んでいるという。

アルカレラはアルコールの消費量が年上の世代に比べて大幅に減少している欧州連合(EU)加盟各国と英国、米国、カナダの18~25歳の若年層をターゲットとしている。オーレン社長は、アルコシンスは欧米の文化を変える可能性もあると期待している。さらに、同社は中国市場への進出にも関心を持っているという。

消費者の好みはすでに変化

ナット教授とオーレン社長は少なくとも英国内においては、社会の変化を実感している。市場調査会社BMIリサーチが11月に発表した報告書によると、英国ではアルコール度の低い飲料の売上高が増加している。

英統計局の調査結果では、英国では16~24歳の若者の25%以上が全く飲酒をしないことが分かっている。また、BMIは2017~2021年の英国のワインの消費量は、年間0.2%減ると予想する。2012~2016年には年平均1.6%で成長したことを考えれば、大きな変化となる。

酒造大手ディアジオも、こうした変化を認識している。2015年にはノンアルコールのスピリッツ、「シードリップ(Seedlip)」に出資。翌2016年には同社をはじめとする酒造スタートアップへの支援を目的の投資ファンド、ディスティル・ベンチャーズを設立した。

英国のスーパーマーケット大手、テスコは11月、スペインのワイナリー、フェリックス・ソリスとの提携により生産したアルコール度0.5%未満のワインを発売。スパークリングワイン、ソーヴィニヨン・ブラン、ガルナッチャ・ロゼ 、テンプラニーリョ・カベルネなどを提供している。ビール大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ 、カールスバーグ、ハイネケンなども、ノンアルコールのビールを販売している。

編集=木内涼子

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